主人公の目を通して植民地政策の汚点を告発した作品
『砲艦サンパブロ』
■監督ロバート・ワイズ
■主演
スティーブ・マックィーン、キャンディス・バーゲン
■DVD発売元
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
■おすすめの理由
この映画は「もしハドソン川に中国の軍艦が浮かんでいたら……」というスーパーが出てから始まります。
つまり、1920年代の中国を舞台にしながら、実はベトナム戦争に対する厭戦感を象徴する反戦映画なのだということを冒頭で示しているのです。
列強国は揚子江沿岸の権益と人命財産を守るという名目で艦艇を出動させていました。そんな中、アメリカの砲艦サンパブロ号に1等機関兵のホルマン(スティーブ・マックィーン)が赴任します。
ロバート・ワイズ監督は、ホルマンの目を通して、列強国が中国で行った植民地政策の汚点を告発していきます。
この映画でマックィーンは、得意のアクションを封印し、他人との調和がうまく取れず機械(船のエンジン)にしか愛情が注げない孤高の男を演じて、生涯唯一のアカデミー賞主演賞の候補になりました。
その姿は、あまり人に心を開かず、カーレースやバイクに熱中した現実の彼の生きざまとオーバーラップするものがあります。
ちなみに彼の助手となる中国人に扮したマコこと岩松信もアカデミー賞の助演賞候補になっています。彼はこの後、名脇役としてハリウッドで活躍しました。
2人の名演を見ながら、激動の近代史に思いをはせてください。