ギャングと敵対した主人公の運命は?
『非情の罠』
■監督スタンリー・キューブリック
■主演
ジェイミー・スミス
■DVD発売元
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
キューブリックの撮ったフィルム・ノワール(アメリカで20世紀半ばによく撮られた退廃的雰囲気の
犯罪映画)です。67分という短い作品ですが、よくまとまった佳品です。
舞台はニューヨーク。
ボクサーのデイヴィーは、向かいに住むグロリアという女性に思いを寄せ始めます。
ところが、彼女はラパロというギャングの情婦でした。そのせいで、デイヴィーとラパロは敵対します。
見所は、かれらがマネキン工場で戦うシーン。どちらが勝つかは観られてからのお楽しみですが、この対決シーンをキューブリック以外には真似できないものにしているのが、暗い画面に浮かび上がるマネキンの白、です。
この白さがゾッとするのです。なにせ男たちは、死にもの狂いで戦っているのです。
それなのに、マネキンはまるで死の国へと2人を招き寄せる死神の手さながらに、いたるところでふわっと画面に浮かび上がります。
この怖さは、同じ監督の撮ったホラー映画『シャイニング』へと受け継がれています。たとえこの世にお化けなんていないとしても、この世には充分に恐ろしいものがある(いる)んです。