歌詞の意味がわからなくても、聴いているだけで楽しくなるバンド
『ハナ肇とクレージーキャッツ』
1950年代の大人気テレビ番組「シャボン玉ホリデー」で一世を風靡したバンドです。両親が子供の頃にはやった番組だったので私はオンタイムに見ていませんが、「面白おかしくて人気のあったコミックバンド」という認識は持っていました。
不可思議な歌詞
青島幸雄さんの書く歌詞がとにかく可笑しく、いかにも「無責任男」の言いそうなことに思えます。」意味はまったく分かりませんが、高度成長期時代にはこのような威勢の良い曲がぴったりだったのでしょう。たとえば「スーダラ節」の「スーダラ」とは何か、「ホンダラ行進曲」の「一つ山越しゃホンダラダホイホイ」とは何を言っているのか、もはや想像すらできません。しかし、聴いているだけでも楽しくなるのはクレージーキャッツの曲の魔力といえるでしょう。もとはジャズバンドでしたから、笑いの基本である「間の取り方」を心得ているかもしれません。
無責任な歌を聴いて人生の転機が訪れた
「ドント節」の冒頭の「サラリーマンは気楽な稼業と来たもんだ」という歌詞を聴き、子供の頃はそう信じていました。ところが、自分がいざ就職しようとすると正社員になれず、正社員になっても不況で会社が傾きかけ、再度転職をすると正社員になれる可能性はゼロ。どこが気楽な稼業なんだ、とさすがに仕事を探すこともつらくなってしまいました。ある日、ふと「ホンダラ行進曲」を聴きたくなり何度も再生して聴いていると、悩んでいることがマイナスに思えてきました。もっと気楽に考えよう、と考え方を変えることができたのです。
次に聴いたのが「だまって俺について来い」でした。「ぜにのないやつぁ俺んとこへこい 俺もないけど心配すんな」という無責任な歌詞には苦笑いしてしまいましたが、なぜか気持ちがふっと軽くなりました。自分の好きなことをやってみようと決心できたのは、このときに聴いた「無責任男」の曲のおかげかもしれません。
落ち込んだ人や元気になりたい人に、とにかくクレージーキャッツのいろいろな曲を聴いていただきたいです。問題が解決するわけではないのですが、なぜか立ち直ることができます。
メンバーのうち、犬塚弘さん以外の方は他界されてしまいました。
1度で良いから実際に見てみたかったです。