スマートハウスのこれからとは?
「ミラーモニター」は洗面化粧台の鏡に情報が映し出される仕組み。「おうち見張りシステム」は、ペットの様子や外部からの侵入を外にいる人に知らせてくれるシステムです。これらは、単に単身女性の暮らしをサポートするだけでなく、将来的には遠隔地に住む高齢者の見守りにも活用できそうに思いました。スマートハウスはこれまでエネルギー分野で先行的に認知されてきた感がありますが、将来的にはこのように私たちにより高いレベルの快適性や安全性、安心を提供してくれる住まいになるのです。それが実現するのもそう遠くない世界のようです。
さて、今回私が最も驚いた研究が「エクステリアガーデンゾーン」に見られました。ここでは、旭化成ホームズ、住友林業緑化、東京セキスイハイム、ナテックス(パナホーム系)、ミサワエクステリア、三井ホームが参加した「住宅エクステリアガーデン研究会」による研究成果があったためです。
まず、素直に旭化成ホームズの実証棟にその他ハウスメーカーの素材や提案が存在したこと自体が驚きでした。これは各社が持っている技術やエクステリアアイテムを共通仕様化することで、改善やコストダウンを行い、普及を進める狙いがあるようです。
環境問題やエネルギー問題が住まいの分野でも大きなテーマになっていますが、住宅にできることは創エネや省エネ設備を取り入れることだけではありません。自然の風や光をコントロールすることによって、エネルギーの使用を減らしながら快適な住空間を実現することもできます。
「エクステリアガーデンゾーン」では、その技術をより高度にするための研究が行われているのです。具体的には、「地球に優しいエクステリア」として太陽光発電を備えたソーラーカーポートや雨水利用システム、ポップアップカーポートの提案などがありました。
ポップアップカーポートとは、限られた敷地を有効利用しながら緑地を生かすもので、要は地中埋設型の立体駐車場。ただ、地表は緑化されており、自動車が持ち上げられる様子はまるでアメリカの古いドラマ「サンダーバード」のワンシーンのようで、私は年甲斐もなくはしゃいでしまいました。
「生活の質」向上がこれからのテーマ
このほかこのゾーンでは、「家と庭がつながるデザイン」も提案されていました。例えば、樹木の構造に習って人工的な木陰を演出する「エアリーシェード」、打ち水や植物の蒸散効果と同じような涼しさを得られる「蒸散ルーバー」などが設置されていました。以上が、「HH2015」の2013年バージョンの概要ですが、そこで行われている研究はいずれも住宅で暮らす人たちの「クオリティ・オブ・ライフ(Quality of Life、生活の質)」の向上を目指したものだと私は感じました。
例えば、前ページで紹介した「在宅医療ゾーン」の研究は、透析患者などが自宅で医療行為を自ら行えるようにし、それにより患者とその家族がより不安なく過ごせるようにするものです。その他のゾーンの研究も、健康や安全・安心、社会とのつながり、省エネ・節電、環境配慮などに関わるQOLの向上の実現を図る目的で行われているのです。
ところで、旭化成ホームズだけでなく、実は主要ハウスメーカーは今、異業種と連携するなどして、このような研究を積極的に行っています。異業種の人たちはそれぞれの専門的な技術やアイデアはあっても、人々の実際の生活シーンに関する知見に乏しく、だからこそハウスメーカーが主体となり次世代の暮らしの研究が必要となるのです。
象徴的なのがスマートハウス分野の研究。それはすでにエネルギーの「見える化」や省エネ・創エネ技術の枠組みを超え、それを活用することで人々の生活をいかに快適に便利にできるか、という新たな段階に入っているのです。
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