ハウスメーカーは住まいや暮らしに関する研究を行っており、中には大がかりな研究施設を持っています。ほとんど一般に公開されることがなくベールに包まれた印象のある研究施設ですが、ではそこでは今どんな研究が行われているのでしょうか。私は先日、あるハウスメーカーの研究施設にある実証棟を訪れる機会がありました。そこで今回はそこでの話をお伝えしたいと思います。

実証棟「HH2015」がリニューアル!

その実証棟は、旭化成ホームズ(ヘーベルハウス)住宅総合技術研究所(静岡県富士市、旭化成富士支社内)にある「HH2015」という建物です。実は昨年の2月にもこの建物について記事にしています。その内容について詳しくはこちらをご覧下さい。

在宅医療ゾーン

「在宅医療ゾーン」の様子。在宅で透析を行うための各種機器や用具などは、1ヵ月分でこれくらいの量になるという。これらを収納するためには、ハウスメーカーの知見が必要になってくる(クリックすると拡大します)

「HH2015」は「2015年に華開く」という意味で、「環境・エネルギー」「住・くらし」「医療」などについて、旭化成グループはもちろん、様々な企業の技術や発想を集めて、世の中に役立つ新たな価値あるアイデアやサービス、提案を生み出す場所とされています。

2011年12月に竣工し、各種アイテムが取り付けられていたのですが、今年4月にリニューアルされたのを契機に、今回改めて私たちマスコミに公開されました。リニューアル以前の「HH2015」は様々な創エネアイテムや、省エネアイテムのかたまりのような建物でしたが、今回のリニューアルではより生活に直結した内容が目立ったように思われました。

中でも、竣工直後から最も早い事業化が見込まれていた「在宅医療ゾーン」でそれを強く感じました。ここには人工透析を自宅で受けられる室内環境と各種アイテムが備わっているのですが、これは実際にヘーベルハウスのオーナー邸でリフォームを実施した成果を盛り込んでいるそうです。

人工透析を自宅で受けるには、透析装置(レンタルが可能だそうです)や医薬品、医療器具、医療用水など、大量の物品が必要とされます。そうしたモノを収納するスペースはもちろん、家族と過ごしながら透析を受けるための心地よい空間を実現することは、医療関係者のアイデアだけではなかなか難しいことだといいます。

ですので、ハウスメーカーなど住空間に詳しい人たちが間取りや収納のノウハウ、さらにはスマートハウス技術で培ってきたIT技術などを駆使することで、在宅医療に適した住環境を可能にするというのがこのゾーンで研究されている内容です。

意外においしい! 水耕栽培装置で作られた野菜

国の政策は、医療・介護・福祉などの増大を背景に在宅医療の方向性に大きくシフトチェンジしています。もしこのような住環境が住まいの中にあれば、医療コスト削減という日本が抱える課題の解消に貢献でき、それは国民一人ひとりのメリットだけでなく、国のメリットも大きくなりそうだと感じました。

緑育ゾーン

「緑育ゾーン」の様子。インテリアとしてリビングの雰囲気を引き立たせ、かつ野菜を栽培できる水耕栽培装置を取り入れた事例(クリックすると拡大します)

このほかにも「在宅酸素療法」や「着衣一体型心音センサー」といった、化学メーカーである旭化成グループが開発したアイテムについても、その実用性の研究が行われていました。今後、この取り組みを医療関係者などに認知を広げていくといいます。

もう一つ、間もなく住宅の中に普及が進みそうな研究が「緑育ゾーン」に見られました。コンパクトな水耕栽培装置が効果的に住宅内に取り入れられるための研究が行われていました。キッチン周辺に配置するタイプは比較的よく知られていますが、インテリアに水耕栽培装置を組み入れているのが、私には印象的でした。

私もこの装置で育てられた野菜を試食させてもらいましたが、みずみずしくって予想外においしかったです。野菜を自給自足しながら、インテリアとして楽しめるという世界が、もうすぐそこまで来ていることを強く感じられました。

さて、東日本大震災以降、省エネや節電の観点から注目されてきたのがスマートハウスです。「HH2015」はスマートハウス研究の場でもあるのですが、今回のリニューアルではそれを構成するスマートアイテムや技術についても、より人に優しく、快適性を追求する方向性で研究が進められているように感じました。

次のページでは、スマートハウスがらみの話からご紹介していきます。