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金持ちになれる人は年金をどう考えるか

多くの国民が心配している年金制度の行方ですが、どうやら破たんすることはなさそうです。とはいえ、将来の負担増・給付減は避けられません。年金制度が崩壊しようと維持されようと、自ら備えておく必要があります。

午堂 登紀雄

執筆者:午堂 登紀雄

ニューリッチへの道ガイド

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持続困難に思える年金制度

年金の将来はどうなる?

年金の将来はどうなる?

私たちを不安に陥れている大きなものに、「年金は破たんする」という懸念があります。私も最近まではそう思っていました。しかし、年金は破たんしない方向へ動いているようです。

2050年には65歳以上人口は5000万人となり、労働人口も5000万人。つまり、高齢者1人に対し、現役世代1人で支えなければならない人口構成になります。税収は40兆円ですが、社会保障費は20兆円も必要で、その大部分が年金です。まともに計算ができる人なら、これがどれほど持続困難な制度かわかるでしょう。

しかし、どうやら破たんすることはなさそうです。では、なぜ年金は大丈夫なのか。それは……現役世代の負担を引き上げ、給付対象者の支給開始年齢を引き上げ、給付額を引き下げようとする動きが加速しているからです。

つい先日、公的年金について、政府の社会保障制度改革国民会議は2013年6月3日、支給開始年齢を67~68歳に引き上げる方向で意見をまとめたそうです。

すぐに引き上げられることはないとしても、私たちが老後を迎える20~30年後には、実現してもおかしくなさそうです。

政府が儲かる年金になる

現状の枠組みでは、社会保険料(厚生年金)の徴収は、収入の18.3%が上限となっていますから、月収27万円の会社員の負担額は毎月約5万円です(ただし労使折半ですので、個人が天引きされるのはこの半額)。そして、支給開始年齢を70歳からにして、給付額を1人あたり月5万円にすれば、年金制度が破綻することはありません。

20歳から70歳まで同じ額の負担だとすると、50年間で徴収できる金額は3000万円です。平均寿命が80歳だとすれば、支給金額は10年間で600万円だけです(90歳まで生きても1200万円で済む)。つまり、政府にとっては差し引き2400万円の儲け(90歳でも1800万円)となり、笑いが止まらない制度となるわけです。

今、年金を受け取っている過剰受給世代(払込保険料よりももらう金額が多い人)は、あと20年くらいでほぼいなくなりますから、将来の政府負担もぐっと少なくなります。

もしかすると、18.3%というこの上限も取っ払われるかもしれません。そうならないとしても、日本年金機構のHPに記載されているとおり、マクロ経済スライド(負担の範囲内で給付水準を自動調整する)を採用しているのが本当なら、今後、給付額は削減される可能性を示唆しています。

このように、現役の負担を増やし、給付を下げれば、めでたく年金制度は維持できるというわけです。

積立方式への移行は可能か?

ただし、政治的に破たんする可能性はあります。それは、国民の不満が高まり、現行の賦課方式ではなく、たとえば積立方式に移行することを決断したときです。

賦課方式では徴収した保険料がそのまま年金受給者に支払われますが、積立方式は自分が過去に積み立ててきたお金を老後に受け取るものです。

この場合、今の年金基金をいったん解散し、それまでの積立金を納付者1人ひとりに返還。そして改めて新年金制度に加入し、個々人が自らの年金を積み立てて行くことになります。

こうして現行の年金制度はいったん破たんします。

しかしこれは、大きな問題をはらんでいます。年金基金は運用損失に加えて保養施設などに使われ、かなり目減りしています。そのため、現役世代が納付してきた金額には遠く及ばないといわれています。

そのうえ、現在年金を受け取っている高齢者の多くは、自分たちが納めてきた保険料よりも多額の年金を受け取っています。だからといって、彼らに返せとは言えませんから、調整に難航します。

これはさすがにおとなしい日本でも暴動が起こるでしょうし、政権も崩壊しそうです。もっとも、帳尻を合わせるために国債発行で補うかもしれませんが。

年金制度が崩壊するにしても維持されるにしても、私たちにとっては不利になるばかりです。そもそも、「払う」といったものを払わない。「いつから払う」といったものを、利息もつけずに後ろにずらす。これが民間なら「債務不履行」となって裁判沙汰ですが、国家ぐるみの債務不履行は合法となるのです。

いずれにせよ私たちは、制度崩壊だけでなく、現行制度下での負担増・給付減に自ら備える必要があるということです。

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