幕末~明治期の実在の女性だから
なぜこんな二本立てになっているのか? それは「主人公が幕末~明治期の実在の女性だから」でしょう。八重と幕末の事件を近づけようと思った時、大技を使えば八重を兄・覚馬のところにいかせる。そこまで大胆でなくても、白虎隊ものをつくる時に中心人物になることが多い会津藩家老・西郷頼母(西田敏行)と八重の交流を密にするなどいろいろな手があるはずです。
八重の記録は戊辰戦争以前はあまり残っていないそうなので、ある程度は自由に動かせそうですが、幕末の会津藩士の子女がそんなことはしないだろう、ということに縛られ、銃の名手という史実に残っていること以外は大胆に変えられないようです。
戦国時代なら
これが実在の女性でもさらに過去の人なら独自の活躍ができます。例えば『江』、本能寺の変の後、江(上野樹里)当時9才が明智光秀(市村正親)に説教したり、伊賀越で三河に逃げようとする家康(北大路欣也)と行動を共にしたり。また『利家とまつ』で「小田原攻め」の時にまつ(松嶋菜々子)が小田原まで突然やってきてあっという間に帰るということがありました。当時の交通事情を考えると無理があり「新幹線に乗ってきたのか?」といわれていました。
成功したかどうかはともかく、こうした歴史に書かれていないことを入れ込んでドラマをつくる、「行間を読む」のは大河ドラマには重要です。しかし『八重の桜』は手堅くいっているようです。
行間を読んで成功したのは
大河ドラマでもっとも行間を読んで成功したのは1978年、6代目市川染五郎(現・松本幸四郎)主演の『黄金の日日』。主人公、堺の商人・呂宋助左衛門は実在していることは確かなものの、実像はさだかではありません。それを利用して、安土桃山時代の主要な事件・戦いの多くに関わり、親友は石川五右衛門(根津甚八)と織田信長狙撃事件の実行犯・杉谷善住坊(川谷拓三)。
木下藤吉郎(緒形拳)とも若き日は友人、天下人の秀吉になってから反目するなど、歴史に縦横無尽に関わっています。
大河ドラマ初の海外ロケ、武士でなく商人が主人公など挑戦的な要素も多く、当時マンネリ気味で行き詰まりかけていた大河ドラマの人気を引き上げたヒット作です。
山場の戊辰戦争に期待
鶴ケ城(若松城)
無念を背負わせるためには遠くにいては弱いとは思いますが、戊辰戦争・鶴ケ城攻防戦が近づき視聴率も上昇傾向。昨年の『平清盛』も5月末から6月初めにかけての中盤の山場、保元の乱では盛り上がりました。
『八重の桜』も今後の展開に期待しましょう。