コンテナを活用して建設されたホテルに宿泊
仮設住宅についての具体的なお話をする前に、先日私が宿泊したちょっとユニークなホテルのことをご紹介したいと思います。そのホテルの何がユニークかというと、各客室がコンテナで出来ているということです。コンテナとは、輸送船や貨物列車などに乗せて運ぶ鉄製の箱のことです。結論から申し上げると、単に宿泊するだけだったら十分な施設だと思いました。コンテナの中にユニットバスやベッド、机などがコンパクトに配置されており、やや小さめのビジネスホテルの部屋という趣きでした。個人差は当然あるのでしょうが、私の場合は暑さ寒さや隣の部屋からの物音もほとんど気になりませんでした。
まだオープンしたばかりだからかもしれませんが、共用部分も実に清潔でした。共用部分は一般の建築物ですが、食堂や集会室、さらにはコインランドリー室なども、設備も充実していました。短期ステイはもちろん、長期ステイにも十分耐えられる内容。私の場合は1泊だけでしたが、快適さの部分で合格点を与えられると思いました。
このホテルは宮城県名取市内にあります。要するに東日本大震災の復興工事に携わる人たちを主なターゲットとした宿泊施設なのです。興味深かったのでホテルの人に話を聞いたところ、名取市内には大勢の工事関係者が滞在する宿泊施設が少なく、だからこのようなユニークなホテルが成り立つのだということがわかりました。
建設費も通常のホテルよりも格安で、清掃や食事の提供などの業務を外注することで、マネジメントの面でも優位性を確保しているのだといいます。また、復興工事による宿泊需要はいつまでも続くものではありませんから、需要が少なくなれば別の場所に移転することも容易なのかもしれません。
東日本大震災で見えてきた従来型仮設住宅の限界
さて、なぜこのようなホテルについてご紹介するかというと、このホテルが仮設住宅の話につながるからです。逆にいうと、仮設住宅はこのホテルのようなコンテナを利用したものであっても良いのではないか、ということです。仮設住宅とは、あくまで仮の住宅なのですから、住宅のように建設しなくてももしかしたらいいのかもしれないと思います。現に、今回の震災では宮城県の女川町にコンテナを活用した2、3階建ての仮設住宅も建設されました。結露や隣戸などの音の問題も少なく、住民のみなさんからは好評だということです。要するに、従来型の仮設住宅の供給スタイルとは異なるかたちが、震災以降、模索されるようになっているといえるわけです。
仮設住宅はこれまでプレハブ建築協会に所属する専門メーカーが主に供給してきました。しかし、東日本大震災のような大規模かつ広域、さらに土地の問題など地域の実情が異なる災害の場合、従来型の仮設住宅の供給スタイルでは対応が難しいことが明らかになったわけです。
そのため、大手のハウスメーカーはもちろん、地場の工務店やビルダーまでもが加わり、住宅業界総動員のような状態で、仮設住宅の建設が行われたのです。その数は5万戸弱。その建設の過程では、用地確保や人材の確保、居住の問題など様々な問題点がクローズアップされることになりました。
ですので今、今後発生するかもしれない大規模災害に向けて改めて仮設住宅のあり方を見つめ直そうというムーブメントが始まっているのです。そして先日、こんな仮設住宅があってもいいのではないか、という具体的な提案が示される機会がありましたので、次のページでご紹介します。