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佐藤琢磨が初優勝! インディカーの楽しみ方(3ページ目)

日本で初めて佐藤琢磨が優勝を飾ったインディカーレース。その魅力、F1との違い、楽しみ方などをご紹介。また、5月末に開催されるアメリカ最大の自動車レース「インディ500」についても解説します。

辻野 ヒロシ

執筆者:辻野 ヒロシ

モータースポーツガイド

No Attack, No Chanceで愛される佐藤

2012年、戦没者追悼記念日の連休で全米のお茶の間にテレビ放映された「第96回、インディ500」でアメリカ人たちは衝撃的なシーンを眼にすることになった。7周を残した再スタートで佐藤琢磨は果敢に攻め、トップチームのチップガナッシの2台の背後に迫った。残り2周でディクソンをかわし、2番手に浮上すると、ファイナルラップの第1ターンでトップのダリオ・フランキッティのインを突き、首位浮上を狙ったのだ。結果的に佐藤はバランスを崩してウォールにクラッシュし、そのままレースを終えたが、最終ラップに起こったドラマにレースを見つめた人たちは大いに興奮した。
佐藤琢磨

インディ500を走る佐藤琢磨(2012年) 【写真提供:Honda】


100年以上の歴史を持つ、アメリカ最大の自動車レース「インディ500」でアジア人が優勝するかもしれない瞬間が訪れたのである。アメリカには「Asians can’t drive(アジア人は運転の仕方を知らない)」という迷信がある。これは運転が下手な人に向けて使われる差別的なフレーズだが、佐藤の実力やレースのことをよく知らない一般のアメリカ人にとってはこのイメージが色濃く存在する。すなわち、アジア人が「インディ500」で優勝するということはアメリカ人にはアンビリーバブルなことなのだ。

しかし、佐藤の攻めの姿勢を高く評価し、チームに加入させたのが、アメリカを代表するレーシングドライバー、A.J.フォイト。アメリカ人なら誰でもその名を聞けばレーサーとして認識するビッグネームのチームに、日本人が乗り、加入して僅か3戦目で優勝した。A.J.フォイトのチームにとって、インディカーの優勝は11年ぶり。さらにロングビーチ市街地で40年近く開催されている伝統の市街地レースで、日本人が優勝したのだ。

「No Attack, No Chance(アタックしなければ、チャンスなど無い)これが彼の信条」とはアメリカのテレビ中継のアナウンサーがファイナルラップで佐藤琢磨のスタイルを表現した言葉。日本人ドライバーとして初めてのインディカー優勝を果たした佐藤琢磨は、まさに今、アメリカで自分の存在と姿勢を示し、アメリカ人の常識を覆そうとしているのだ。

5月はインディ500月間。注目が集まる1戦に!

チームオーナーのA.J.フォイトは腰痛の手術のためロングビーチのコースにはおらず、自宅でレースを観戦した。そして、佐藤琢磨に「信じられないほど素晴らしいドライビングをした」と賞賛のメッセージを送った。そんなフォイトも楽しみにしているのが、5月26日(日)に開催される「第97回インディ500」だ。シリーズ最大の1戦であり、フォイト自身も最多タイの4勝という偉大な記録を保持する大会である。
A.J.フォイト

インディ500、アメリカレース界の大スター、A.J.フォイト。大きなお腹に変貌しても今も大人気。アメリカ人から大きな尊敬を受けるアメリカンレーサーの代名詞だ。


「インディ500」の開催期間は「Month Of May」とも表現され、通常の3日間のレースウィークとは異なり、5月11日から26日という非常に長い期間で開催される。決勝日には30万人以上の観客が見守り、全米の人たちがテレビで視聴する中で、A.J.フォイトのチームで走る佐藤琢磨の活躍が期待される。

インディカー

インディ500 【写真提供:Honda】



<2013年の走行スケジュール(アメリカ時間)>
5月11日:オープニングデイ+練習走行
5月12日~16日:練習走行
5月17日:ファストフライデー(練習走行)
5月18日:ポールデイ(予選:1位~24位のグリッド確定)
5月19日:バンプデイ(予選:25位~33位のグリッド確定)
5月24日:カーブデイ(最終練習走行)
5月26日:決勝500マイル(200周)

<日本でのテレビ中継>
日本時間の5月27日(月)早朝に、CS放送のGAORAで完全生中継される他、再放送も行われる予定。
GAORA 公式サイト

<インディ500の特徴、楽しみ方>
◯決勝グリッドは33台が最大。一列3台でのスタートはシリーズ中、唯一の方式
◯最高速は時速350kmを越える超ハイスピード
◯オーバルレースのため、クラッシュなどが発生するとフルコースコーション(セーフティカー介入)となり、その度にレースがリセットされるため、最後まで眼が離せない。
◯通常のインディカーシリーズは3位までの表彰だが、「インディ500」では優勝者しか表彰されない。優勝者はミルクを飲むのが伝統。
◯スタート前のセレモニーでは有名歌手による国歌斉唱の後、戦闘機が上空に飛来する。
◯佐藤琢磨の所属するA.J.フォイトのチームには「インディ500」だけ、コーナー・デイリーが加わり、2台体制になる。
◯佐藤琢磨が優勝すれば、もちろん日本人初。A.J.フォイトのチームにとっては歴代2位のチーム優勝回数になる。
◯エリオ・カストロネベス、ダリオ・フランキッティは最多勝タイの4勝目を狙う。

月曜日の深夜から早朝という、日本のファンにとっては非常に見づらい時間帯にはなるが、「インディ500」はやはり生中継で楽しむのが一番。決勝までの練習走行の様子や結果などはインディカーの公式サイトYou Tubeの公式チャンネル(共に英語のみ)で楽しむことができる。
佐藤琢磨

佐藤琢磨 【写真提供:Honda】


日本人初の「インディ500」ウイナー誕生なるか。是非ともご注目頂きたい。かつては日本のレース漫画などで描かれた空想の世界。それが現実となる日はすぐそこまで来ている。


【関連ガイド記事】
インディ500に学ぶ、100年続くモータースポーツ文化

【インディカー情報サイト】
Honda インディカーシリーズ
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