離島・僻地の理想と現実
小さな村や島で、住民と身近な存在になりながら保健活動をしてみたい! 保健師を目指す方なら一度は考えてみたことがあるはずです。そこで目が行くのは離島や僻地ではないでしょうか?とてもやり甲斐のある仕事です。離島や僻地では医師と同様、保健師のなり手が少ないので、たとえ新卒でも熱意だけで就職することは可能です。しかし、実際はかなり厳しい現実が待っています。たとえば、その土地独自の風習やコミュニティに慣れるかどうか……。
ある島に飛び込んだAさんの場合、まず戸惑ったのは自分が保健師ではなく、何でも屋になっていることでした。たとえば、役場にこんな電話がかかってきます。
「うちの婆ちゃんが病院に行くから迎えてきて」
そんなことは家族がやってと拒否したら、上司に怒られたといいます。聞けば前任の保健師たちはみんなやっていたというのです。
僻地に勤めた経験のあるBさんは、毎日の生活が常に監視されているようで精神的に辛かったといいます。なんせ小さな集落なので、自分がどこで何を買ったのかなど、翌日には村のみんなが知っていることにストレスを感じたのです。
離島への憧れ
逆によい話もあります。ある島に飛び込んだDさんの場合、同じ課の島出身者が保健業務に協力的でしっかりサポートしてくれました。Dさんも島に溶け込もうと、時間外の活動にも積極的に参加し、いつしか役場や島民から一目おかれる存在になりました。今では町長を説得して新たな事業を展開するなど、さらに熱意をもって島に定着していました。
あえて厳しく書きますが、離島や僻地での仕事はそう甘いものではありません。なり手が少なく、外部から理想に燃えてやってくる若い保健師の熱意に支えられている面もあります。3年続ければよい方、1年以内に離れていく方もいます。その土地の流儀に流されなければいけないことも多々あります。そのあたりをしっかり理解しておきましょう。