スクリーンを利用するメリット
プロジェクターの大画面を楽しむには、「スクリーン」が必要です。壁紙が白くて無地なら、壁面をスクリーンとして流用する事も可能ですが、プロジェクター投射専用のスクリーンを使用すれば、様々なメリットが得られます。- 壁面が家具で占領されていても、スクリーンを設置すると一定の面積が確保できる。
- 機能として、明るい部屋でも映像を鮮明に映し出せるタイプが選べる。
- 色味が管理されているので、制作者の意図した色彩を忠実に再現できる。
- 平滑で映像に歪みが無く、また、高精細な映像も細部まで確認できる。
生地(幕面)の種類と特徴
スクリーンの生地は映像を投射する側を「幕面」と呼び、機能面で以下の4タイプに大別できます。■マット (拡散タイプ)
家庭用として最も一般的なタイプで、プロジェクターから投射された光を、全方向へ均一に反射する幕面です。画面の隅々まで明るさが均一で、画質面で優れています。
一方、照明や外光など、映像にとって有害な光も同様に拡散してしまう特性上、明るい部屋では映像の黒が再現できなかったり、色が薄く見えるなどの弱点があります。
総じて、暗室を保てるリビングや、シアター専用ルームに適しています。
■ビーズ (回帰タイプ)
幕面にビーズ(ガラス玉)を敷き詰め、プロジェクターからの投射された光を、主に入射した方向へ重点的に帰す特性を備え、回帰タイプとも呼ばれます。
効果的な利用方法は、プロジェクターを低い位置に設置し、プロジェクター周辺で視聴します。プロジェクターからの投射光は、視聴位置付近へと効率よく届き、映像の見え方に有害な天井照明の光や、外光や隣部屋から漏れてくるサイド方向からの光は、やって来た方向へ戻って行くので、明るい部屋でも、マットタイプに比べて鮮明な映像を見ることができます。
一方、画質や寿命面で弱点があります。反射光が一定方向に偏るので、ギラつきや輝度の不均一が生じます。また、製品によっては、幕面に敷き詰められたビーズが剥離する事もあり、取扱に注意が必要です。
■パール (反射タイプ)
銀紙のような幕面で、プロジェクターからの投射された光を、鏡のように、入射角に等しい角度で反射する性質を備え、反射タイプとも呼ばれます。
効果的な利用方法は、プロジェクターを天井など高い位置に設置し、椅子やソファーに腰掛けるように、低い位置で視聴します。
プロジェクターからの投射光は、視聴位置付近へと効率よく届き、映像の見え方に有害な外光や隣部屋から漏れてくるサイド方向からの光は、幕面を反射して反対側へと抜けて行くので、明るい部屋でも、マットタイプに比べて鮮明な映像を見ることができます。
一方、拡散性が低い為、プロジェクターの光が太陽のように光るホットスポットと呼ばれる現象が起きたり、逆に、端部に投射された映像光が外へ逃げてしまい、視聴ポイントからは暗く欠けたように見えたりするなど、輝度の不均一が生じます。
■サウンドスクリーン (音響透過タイプ)
スクリーンに無数の小さな穴、あるいは、繊維の織り目による隙間があり、背面に設置したスピーカーの音を透過させる事ができる幕面です。画質は通常、マットタイプと同じ傾向で、映画館では通常、この音響透過タイプが使用されています。
映像と音を一体化できるのが最大の特徴で、例えば、セリフは俳優の口元から聞こえるなど、臨場感が増します。また、スピーカーをスクリーンの後ろに配置できるので、大型のスクリーンを導入して、左右のスペースが確保できない場合の救済策としても有効です。
一方、製品の数が少なく、比較的高価です。幕面の構造上、光が幕面を透過して後方へ漏れ、明るさが低下します。また、プロジェクターの画素と、幕面の穴や織り目の凹凸が干渉して縞模様(モアレ)を引き起こす事もあり、設置時に注意が必要です。最新のプロジェクターはフルHDの4倍の画素密度を持つ「4K」解像度が人気ですが、幕面の凹凸で解像度が低下するのを心配するユーザーもいます。
構造(機構)の種類と特徴
スクリーン製品には、構造面でいくつかの種類があり、幕面とは別に、用途や予算に応じて選ぶ事ができます。代表的なタイプを紹介します。■天吊り式
天井に固定し、巻き取れる構造のスクリーンです。巻き取りは手動式、あるいは電動式が選べます。電動式は高価ですが、リモコンで操作したり、プロジェクターの電源操作と連動して、自動でスクリーンの昇降ができる高機能製品もあります。
天吊りのメリットは、天井や壁面の高い位置に固定するので、視聴時以外は巻き取っておくと、片付ける手間もなく、生活の邪魔になりません。
デメリットは、高い場所への設置が難しく、また、一度設置すると移動が困難です。
ホームシアター専用ルームやリビングシアターに適した構造と言えます。
製品例:
■立ち上げ式
床に置き、巻き取られたスクリーンを下から持ち上げる構造のスクリーンです。
立ち上げ式のメリットは、スクリーンを部屋から部屋に移動したり、物置などへ収納が可能な点です。
デメリットは、投射の度に設置するのが面倒で、また、設置場所が固定されないため、利用の度にピント合わせなどの調整が面倒です。簡易的な用途には適していますが、本格的なホームシアターには向いていません。
総じて、固定設置ができない賃貸住宅やライトユーザーに適しています。
製品例:
■タペストリー式 (掛け図式)
タペストリーのような構造で、ただ掛けるだけの最も簡易的な方式です。
価格面ではメリットがありますが、エアコンや扇風機の風でスクリーンが揺れるなど、画質面ではやや不安定と言えます。
製品例:
■はり込み式
スクリーンをフレームにはり込み、常設するタイプのスクリーンです。シアター専用ルーム以外では採用し難しいですが、平滑性に優れ、究極の画質を求めるユーザーに適しています。