日常ツールとしてBクラスより格段に心地いい
17インチの標準ホイールを履くA180ブルーエフィシェンシーで走り出した。途端、記憶にあったBクラスとの違いに驚かされたものだ。もちろん、着座位置が低く、これまでのAクラスとはまるで違う景色の流れに目を見張ったということもある。けれども、それ以上に、乗り心地やステアリングフィール、そしてパワートレインのマナーまでもが、基本的なメカニズム構成を一にするはずのBクラスといちいち違っていることに、いい意味で驚いたのだ。一般道では、Bクラスよりもしなやかな動きをみせる。確かに、硬めではある。けれども、妙に突っ張った感覚やバタツキがなく、その動きには、よくしなる一枚板、といった風情があった。
もちろん、ランフラットタイヤの嫌味は、路面が荒れてくるとすぐに顔を出す。当たりが強く、収まりが悪い。けれども、全体として、嫌な感じにはまるでならない。日本仕様のBクラスは、その煮詰めがちょっと甘い。同じ形式のサスペンションとシャシーでありながらも、Aクラスになって、独自のキャラクターセッティングはもちろんのこと、熟成が進んだということか。ならば、Bクラスの最新デリバリーモデルもそうなっていることだろう!
ただし、ランフラットタイヤの使いこなし具合では、まだまだBMWに一日の長がある。Aクラスでは、連続した凸凹路でバタバタと嫌味な余韻が残るのだ。FRの1シリーズに負けているとすれば、そのあたりの洗練さではないだろうか。
デュアルクラッチトランスミッションの7G-DCTを採用。軽量コンパクト(全長367mm、重量86kg)な設計で、車両重量や最小回転半径に貢献する。ステアリングコラムのセレクターレバーとパドルシフトを備える
おそらく、スポーティイメージを前面に打ち出したAクラスゆえ、そして、主要メカニズムをBクラスとほぼ共有するからこそ、ライドフィールのなかでのキャラクター付けを、開発陣はより意識したのだろう。
結果、DCTツインクラッチミッションとブルーダイレクトテクノロジーを採用した第3世代の直噴ターボエンジンとの相性がさらに良くなった。1.6リッターながら非常にはつらつとしたパフォーマンスをみせる。これなら、パドルシフトを使って積極的に運転を楽しんでもいい。
アイドリングストップのマナーも上々。プレミアムブランドの意地だろう。BMWが、音と振動でエンジンスタートを意識させるのに対して、メルセデスのそれは、抑え込みがはっきりと利いている。普段遣いには、やっぱりこちらの方が嬉しい。
エアロダイナミクスの向上も、大きなテーマだった。雨中の高速道路を、なんのためらいもなくハイアベレージで走ってくれる様子は、ベンツなのだからむしろ当然、という気分にもなる。雨が降っているときの高速走行におけるその見事に安定した走りっぷりは、正しくCクラス以上のメルセデスのそれに匹敵する。
ただし、FFゆえのマイナス点もあった。それは、たとえばレーンチェンジをしたあとに感じる、電動パワーステアリングに特有の、尾を引く妙なねばり気だ。同時に、フロントがある程度重いため、粘りの先に重量を感じてしまうこともあった。どんな姿勢であっても路面に張りついて離れないメルセデス、というレべルには、惜しくも達していない。
トータルでみれば、空間性以外の評価項目で、Bクラスよりも日常のツールとしては格段に心地よく、そして狙いどおりに若々しく仕上がっていると思う。一躍、Cセグメントコンパクトカーの代表的モデルにのしあがってみせたと言っていい。