「染まらないで帰って」と切なく告げる、残されるものの歌
1975年にリリースされ、大変ヒットしたらしいこの曲ですが、知ったのはだいぶ後になってからです。そう、30歳を過ぎたころでしょうか。世に言う名作、名曲というものは、その時代そのものを謳っていても、永遠に古びない普遍的なものを持っていると言われますよね。この「木綿のハンカチーフ」も、そんな名曲のなかのひとつなのでしょう。
70年代といえば、いわゆる「高度成長期」。日本がまだある意味、幸福であった時代、明日をただ目指してがむしゃらに「上」を目指せば幸せになれると確信できていた時代。都会に働きに、まぁひと旗あげに行く意気軒昂(いきけんこう)な恋人に、「染まらないで帰って」と切なく告げる、残されるものの歌です。
ロンドンでもニューヨークでも行こうと思えばひょいと行けるし、ネットでいくらでも情報が得られる今ですから、そんな設定古臭い。そう思う人もいるでしょう。ですが、そこが、名曲たるゆえんなのです。
距離というものは、すごいものです。いつもそばにいたものが、電話やメールでやりとりできるとはいえ、ひとたび離れれば、心の距離もあくのです。それは、事実です。
故郷の純朴な青年が、「都会」のきらきらしい風にふれれば、「木綿のハンカチーフ」をつつましやかに待つ恋人を忘れるなぞ、たやすいことです。
その普遍的事実を歌い上げたこの名曲は、だからこそ今でもドラマで使われたり、カラオケで歌われたりするのだと思いますが………。
皆様は、どう思われますか?