宮部みゆきの『火車』に匹敵する読みごたえ

自然死と判断され発覚しない「彼」の殺人と並行して、介護の現場に身を置く斯波たちの日常が描かれます。真面目な人ほど蝕まれる過酷な労働、低い賃金、老人の身になったサービスをしたくてもできない介護保険制度の矛盾。末端で苦労している従業員は知る由もない不正が発覚し、フォレストは危機に陥ります。

そのことが巡り巡って、誰も気づかなかった連続殺人をあぶり出す。大友が「彼」にたどりつくプロセスの書き方は特に見事です。一見意味を持たないデータが、見方を変えると重要な手がかりになる。身近な社会問題に対する深い考察と、ミステリーとしての面白さを兼ね備えているのです。宮部みゆきの名作『火車』を初めて読んだときの衝撃と興奮を思い出しました。

クリスチャンの大友が語る黄金律の話も物語に奥行きを与えている。最後のページまで読むと、表紙の写真をじっと見て、もう一度「彼」の心の動きをたどりなおしたくなるでしょう。




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