母vs娘 謎解き対決の行方は?
豊富な知識と洞察力で古書の謎をいくつも解いてきた栞子さんですが、母は彼女を上回る切れ者。しかもほしい本を手に入れるためなら、家族を捨てることさえも厭わない人です。親子の対決が読みどころ。この母と娘の関係、ちょっと『美味しんぼ』の山岡士郎と海原雄山を彷彿とさせます。娘は母を憎んでいるけれども、母の真意がわかったら何か変化がありそう。家族や男女にまつわる諸問題を本(『美味しんぼ』は食べものですが)で解決してしまうところも、そう感じる所以かもしれません。
家では謹厳な教育者、愛人の前ではいたずら好きの乱歩マニア。二つの顔を持っていた男性が、我が子に対してどんな感情を抱いていたのか。鍵探しの過程で明らかになる場面はじんときます。乱歩の名作に絡めた仕掛けも楽しい1冊です。