“Gの箱”は恐ろしいほどの体感速度
果たしてV8ツインターボが目覚めると、大パワー&大トルクの源が、おおいにフロアやシートを打ち鳴らす。つられて、こちらの心臓の脈拍まで、勝手にあがってしまう。エンジンの鼓動が、逞し過ぎるのだ。エグゾーストノートが、他の同ユニット搭載AMGモデルにも増して低くワイルドに聞こえてくるのは、ドライバーのすぐ脇下で、床下の空気を震わせているからであろう。スピードメーターはマックス280km/hを指し、タコメーターのレッドゾーンは約6300回転からはじまっている。マジでその気になってしまうあたり、AMGというブランドの、バックボーンの強さの現れだ。
駐車場からバックでクルマを出そうとして、大いに驚かされた。跳ねるように飛び出してしまう。背が高いクルマである。日常使用時にバックするときは、くれぐれも後方確認を怠り無きように……。
前に向かって、アクセルペダルを踏み込んだ。そのまま右足からカラダが地面に押し込まれるような感覚を伴って、2.5トンもの巨大な鉄製箱が爆発的に前へと飛び出す。聞こえてくるのは、エグゾーストノート、なんてヤワなもんじゃなかった。パワートレインからの音はもちろん、タイヤが転がる音、四角いボディが空気の壁を破って進む音、それら合奏が、ただただゴォーッという轟音に変わる。
絶対的な加速パフォーマンスでは、他の63AMGモデルには及んでいないはずも、視線の高さとGクラスに乗っているという気持ちの昂揚が、恐ろしいほどに体感速度を上げてしまうのだ。それはもう、ほとんど、恐怖心を抱かせるに近いフィールである。
2000回転で飛び出し、4000回転で“Gの箱”が強大なトルクに満たされた。サイドマフラーから出た自らの排気と音の衝撃波で、尻がジャンプしそうである。