33km/Lで90万円!「アルトエコ」はこんなにスゴい
アルト ECO-L ミルクティーベージュメタリック
何と! ハイブリッドでもないのにJC08モードで33km/Lという低燃費車が出てきた。しかも価格は“ほぼ”フル装備で90万円。移動の足として考えているなら、これほどリーズナブルなクルマなど無い。果たしてどんなスペックなのだろうか。キッチリ分析してみよう。
まず「低燃費の理由」だけれど、特殊なエネルギー回生システムを採用している。簡単に言えば、ブレーキを掛けた時だけ発電機を稼働させているのだ。御存知の通り自動車で使われている電力はエンジンで駆動する発電機で作っている。この時の抵抗は1馬力以上にもなり、案外と大きい。
50km/h程度で走っているときに必要な馬力は10馬力程度。そのうちの1馬力なのだから当然か。自転車に付いているタイヤで駆動させるタイプの発電機をイメージしてもらえばいいだろう。アルトエコは普段発電をしない。ブレーキを掛けた時だけ発電し、専用のリチウム電池に貯めておく。
アクセルを踏んだ時など、貯めた電気でクルマに使う電力を賄うという寸法。さらに停車する時は車速13km/hからエンジンを停めてしまう。普通のアイドリングストップは停車してからエンジンが止まるのに対し、アルトエコのシステムは停車前にエンジンが止まる。
二つ目は車重。徹底的な低減を行い、何と710kg。20年前の軽自動車で710kgは珍しくなかったものの、今やエアバッグやABSなど装備し、64km/hからのオフセット衝突にも対応している安全ボディだということを考えれば素晴らしい! しかもATだし。
ガソリンスタンド減少の折、燃料タンクを20Lにまで減らしたのは少しやり過ぎだと思うけれど、軽量化は絶対的な動力性能の向上を意味する。低燃費化することにより、走りまで良くなっているのだから興味深い。このくらい軽いボディならターボエンジンじゃなくても元気よく走る。
驚くのは145/80R13という細いタイヤ。しかも空気圧が300kPaだという。普通のタイヤで210kPa。エコタイヤでも250kPaくらいだから、自転車なら空気をパンパンに入れた細いタイヤを履いているようなもの。さすがに「曲がる」性能で厳しいけれど、ブレーキはけっこう効く。
アルト ECO-S インパネ
そうそう。夏場にアイドルストップするとエアコンの冷気が少しずつヌルくなってくる。そいつを防止するため冷却剤を組み込んだエアコンも採用するなど(冷却剤無しの2倍くらい長い時間エンジン止められる)、カタログ燃費だけでなく実燃費向上のためのアイテムも採用している当たりがエラいと思う。
気になる燃費は流れの良い郊外路だと25km/L近くまで伸びる。普通の通勤モードで20km/L程度に達するようだ。文頭に書いた通り、新車で買えばメインテナンスコストも大して掛からず10年以上乗れる。間違いなく移動コストは路線バスなどより圧倒的に安い。