綺麗な直線だけで構成されたスツールがある。
無駄な要素は全くない・・・無さすぎて、少々寂しいくらいだ。
このスツールは、ある学校で学生の為にデザインされたものである。南ドイツの小さな都市、ウルムに開校された‘ウルム造形大学’・・・・・20世紀デザイン界のビートルズ的存在、あのバウハウス(総合芸術学校)と縁が深い学校である。
1919年、ドイツのワイマールに設立したバウハウスは、1933年、ナチス政権によって解体された。わずか14年という短命の小さな学校であったが、デザイン、建築、造形教育において世界的に大きな影響を与えた学校なのである。
その精神は、その後アメリカのニューバウハウスやドイツのウルム造形大学へと受け継がれた。
ウルム造形大学の初代学長はマックス・ビル氏・・・・・スイス生まれのビル氏はチューリッヒの美術学校からドイツのバウハウスへ進み、1953年自ら設計し、カリキュラムの立案をしてこの学校を設立した。
この時、彼が一人一人の学生のためにデザインしたのが、このスツールである。
←厚さ18mmの座面と両側の脚との接合部分。
8mm幅のくり返しで縦横方向の材を活かして接いでいる。
つい枡酒を思い出してしまう・・・日本的なディテール。
学校では学生がこのスツールを一脚ずつ所持して、様々な学校生活の中で使用した。もちろん、作業や聴講の時に座るスツールであるが、横にするとテーブル・机になり、逆さにして本や教材を置く本箱にもなる。