住宅工法/耐震住宅・住宅工法

これからの地震対策は余震にも考慮して選びたい

東日本大震災以降、家を建てるとき、耐震性能に大きな関心を寄せる人たちが増えています。ただ、耐震、制震、免震とある地震対策の中で、それぞれの違いや特長をきちんと理解していない人もいるのでは? どの対策をどのように選んだらいいのか、考えていきましょう。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド

地震の規模や被害の大きさが記憶に新しい東日本大震災から、2年。2011年の3月以降、家を建てるときに耐震性能が気になるという人がさらに増えたようです。今、耐震性の高い家を建てたいと望むなら、どんなことに注目して家を建てたらいいのでしょうか。

「耐震」「制震」「免震」3つの地震対策

現在、住宅の地震対策としては、「耐震」「制震」「免震」の3つが挙げられます。しかし、この3つの違いや特長を正確に理解していない人もいると思いますので、ここでおさらいしておきましょう。

「耐震」とは、構造を強くつくることで地震の揺れに耐える構造のこと。具体的には、建物の主な構造となる部分、木造軸組工法なら柱や梁、筋交い、補強金物等を使って建物の構造を強化し、地震の揺れに耐えるようにします。地震の揺れを軽減する仕組みや装置はついていないので、建物自体は地震に耐えられても、壁が損傷したり家具が転倒する可能性があります。

「制震」とは、建物内に装置を組み込み、地震のエネルギーを吸収して揺れを制御する仕組みのこと。制震装置が揺れを低減し、建物の変形を小さくするとともに、壁などの損傷を軽減する働きをします。耐震構造が地震の揺れに対してふんばって耐える構造とすると、制震構造は耐えるのではなく、いなすという感じの構造だと考えるとわかりやすいかもしれません。建物に組み込む制震装置はさまざまな形のものがメーカーによって開発されています。

「免震」とは、基礎と建物の間に免震装置を設置して、地震のエネルギーを吸収し揺れを直接建物に伝えにくくする方法です。揺れを大幅に軽減してくれるので、人命はもちろん、建物内部の損傷や家具の転倒なども防ぎます。免震装置についても、いろいろなメーカーが研究・開発していて、装置の形状や素材などにもいくつかの種類があります。

では、この中でどの対策を選べばよいのでしょうか? 

これからの地震対策は「耐震」にプラスする

長く暮らせる家を建てるなら、建築基準法で想定している大規模な地震に耐えるだけでなく、地震後も暮らしを維持し、繰り返し発生する余震にも負けないようにしたいものです。事実、東日本大震災の際には、本震の後に何度も発生した余震の恐怖が記憶にあるのではないでしょうか。

ということは、「耐震」「制震」「免震」の3つの中からどれを選択するかというよりは、これからは地震に強い構造という「耐震」に、余震にも耐えられる対策を加えるというのがよいと思います。しかし、「免震」は価格が高く、メンテナンス費用もかかります。さらに、敷地条件によっては設置できないことがあります。それに対して、「制震」は、装置や住宅の規模にもよりますが、おおむね数十万円程度と、免震に比較すれば低価格であり、設置に際して敷地の制約もありません。

松本氏

制震装置「MIRAIE[ミライエ]」の開発に携わっている住友ゴム工業の松本さん

余震に対する制震装置の効果について、住友ゴム工業で住宅用制震ダンパー「MIRAIE[ミライエ]」の開発に携わリ、工学博士でもある松本達治さんに聞いたところ、「地震対策は一度の大きな地震に耐えればいいというものではなく、長期的に効果が期待できるものであるべき」とのこと。そのうえで、「取り入れやすい価格であること」も必要だと話してくれました。

このように考えてくると、地震対策として制震装置はかなり魅力的です。ところが、制震装置とひと口にいっても、いろいろなものがあります。では、どんな制震装置を選べばいいのでしょうか。次ページで、説明していきましょう。

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