住宅工法/耐震住宅・住宅工法

これからの地震対策は余震にも考慮して選びたい(2ページ目)

東日本大震災以降、家を建てるとき、耐震性能に大きな関心を寄せる人たちが増えています。ただ、耐震、制震、免震とある地震対策の中で、それぞれの違いや特長をきちんと理解していない人もいるのでは? どの対策をどのように選んだらいいのか、考えていきましょう。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド


市場に出回っている制震装置は多種多様

現在、いくつものメーカーが制震装置を開発しており、さまざまなタイプの製品があります。例えば、装置の主な素材をとっても、ゴムを使用したものから、オイルや金属を使ったものなど多種多様。具体的には、一般的なゴムとは違い、衝撃を吸収する高減衰ゴムと呼ばれる特殊なゴムを採用したものや、粘性抵抗の強いオイルを使った製品が多く見られるほか、粘弾性のある特殊なアクリル樹脂を用いたものなどが製品化されています。

また、形状や施工方法なども、さまざまです。ほとんどは壁の中に施工しますが、筋交いのように斜めに設置するタイプや、装置で菱形をつくるように取り付けるものなどがあります。新築時に採用するのが原則ですが、天井や床などに手をつけなくても施工できるリフォーム用の商品も登場しています。リフォームで設置する場合は、建物のどこに設置するのか、いくつ設置するのかを設計担当者とよく相談してから決めましょう。できれば、建物の一部分ではなく、全体の耐震性能を高めることが望ましいからです。

このようにいろいろなタイプがあるため、1軒の家にいくつ設置すべきかといった設置数や耐用年数も、メーカーや装置によって異なります。延べ床面積35~40坪程度の家で、4~8箇所ほどの設置を想定し、耐用年数は50~70年としている製品が多いようです。

優れた制震装置を選ぶために

木造住宅に採用するのであれば、性能がいいことや、価格が手ごろであること、施工が容易であることに加えて、できるだけメンテナンスが必要ないことと、耐久性があるものを選ぶといいと思います。

制震装置

耐久性のある高減衰ゴムを使った制震装置「MIRAIE[ミライエ]」

前出の住宅用制震ダンパー「MIRAIE[ミライエ]」は高減衰ゴムをつかった制震装置。「最大で建物の揺れ幅の70%(※1)を低減」します。ゴムの耐久性を確認する試験結果によると、90年(※2)経過してもほとんど性能が変わらず、定期的なメンテナンスなどの必要もないのだとか。しかし、松本さんによると「高性能のゴムを利用したものであれば高性能の制震装置であるということでもない」そうで、フレームの構造により、制震ダンパーの性能は大きく変わるのだそうです。

加えて、制震装置がその性能を最大限に発揮するには、取り付け位置や方法、設置後のメンテナンスなどもとても大切なことです。そのため、制震装置を開発するメーカーは、装置そのものについてはもちろん、いざ地震が起きたときの住宅の構造などについても深い理解を持ち合わせている会社であることが望ましいといえますね。

効果的な地震対策として、コストや仕組みの面から採用しやすいのが制震装置です。これからも新たに開発した製品が市場に登場してくるかもしれません。そういった多くの制震装置の中から、自分にとってベストな装置を選択するには、複数の製品を比較して、装置の仕組みや技術的な特長を理解することが必要でしょう。

日本のどこにいても避けられないのが地震。だからこそ、長く暮らせる家にするには、しっかりと勉強して、納得のいく地震対策を選びたいものです。

※1:振動台実験の結果によるもので、建物プラン、設置数、地震波により異なります
※2:住友ゴムの促進劣化試験の結果による
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