この手の本は数多く出版されているが、たいていは著者の「実感値」「経験値」に基づいて書かれている。今回紹介する「マンションは10年で買い替えなさい」が、そのような「体験談的著書」と比べて優れている点は、過去の膨大なデータを分析したうえでの結論が書かれている事。本の帯にも「20年間、1万8000棟の調査でわかった」とある。

ちなみに著者の沖 有人氏は不動産の調査/マーケティングを行うアトラクターズ・ラボ株式会社の代表で、そこでは「不動産のデータを日本一多く所有し」ており、賃料査定あれば「数日あれば30万件」がこなせるシステムを有する。そんな著者がこの本で主張する論は非常に明快だ。

例えば、持家と賃貸ではどちらが得? といったアリがちな問いに対してもバッサリと切る。答えは「持家の方が圧倒的に有利である」。その論拠も「自宅(マイホーム)は、税制と金利が優遇されている」から、といたってシンプルだ。

そりゃそうだ。「不動産を購入して、賃貸に出す」というのは資産運用の定番で、物件選択が間違っていなければ利益がでる。同じ不動産を買う場合でも、自宅購入であれば、不動産投資と比較して有利な金利、有利な税制となっている。持家vs賃貸ではなく、[投資用物件購入]vs[投資用物件購入+マイホーム税制/金利]という構図で見れば、持家は儲かるという結論は、腑に落ちる。

いろいろな疑問に対する答と理由が、他にも多く紹介されている。
  • 分譲マンション8つの真実
  • 10年で住み替える12の根拠
  • 自宅マンションを「資産」にする7つの法則
新築マンションについての話がメインであるが、中古マンションについても、自分が売主である場合、買主である場合、それぞれについての仲介会社との接し方の具体的な指針も書かれている。広くマンション売買について網羅されているのはうれしいところだ。

持家は損得を考えずに気に入った場所/間取りで住みたい、といった考えも根強い。とはいえわざわざ損をしたい人も少ないであろう。売却査定価格がローン残額を下回ると物件の売却時に、賃料査定額がローンの毎月返済額を下回ると賃貸に出した時に、それぞれ金銭的な持ち出しが必要になる。金銭的に余裕が無ければ住替えが困難になり、引越すらままならない。

家族構成やライフスタイルの変化で住替えを考えているのであれば、是非とも読んでおきたい一冊である。

【参考サイト】
住まいサ~フィン

 



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