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14年ぶりの基準変更で住宅の省エネ化は新ステージに(2ページ目)

2013年は、住宅の省エネ化について新たな動きがある1年となりそうです。それは、新たな省エネ基準がスタートするから。今回はその内容について考えていきます。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

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国は、10月にスタートする新たな省エネ基準(まだ次世代省エネのような表現はされていません)について、2020年までに全ての新築住宅に適用するべく、考えているようです。そのポイントは大きく二つあります。

新たな省エネ基準は建物全体での評価に

家庭用蓄電池

家庭用蓄電池の本格的な実用化は昨年始まったばかり。こうしたスマート設備の効果を含めて住宅の「一次エネルギー消費量」としてとらえるのが、新たな省エネ基準の考え方だ(クリックすると拡大します)

一つは対象をこれまで外壁や開口部など建物だけでなく、空調や換気、給湯、照明、昇降機(エレベータ)などの設備機器も含めた「一次エネルギー消費量」に変更することです。要するに建物単体だけではなく、建物全体の省エネ効果を反映した基準となるのです。

これらは、現在普及が始まっている「スマートハウス」や「ゼロエネルギーハウス(ZEH)」などの動きと連動したものともいえます。建物そのものの省エネ基準は、現行の次世代省エネと同様にすることが有力のようですが、これからその詳細が決まっていくようです。

もう一つのポイントは、これまでの次世代省エネ基準が「努力義務」であったのに対し、新たな省エネ基準は「義務化」されるということ。「2020年までに」というのは、それまでに住宅供給者が徹底できるよう、調整期間を設けるという意味合いがあるようです。

実は、新たな省エネ基準で住宅を建てるということは、それほど容易なことではありません。建物の設計時に省エネ効果を計算し、さらに各種機器の省エネ効果をも反映させて、一定基準をクリアしているのか、省エネ効果の全体像を示さなければいけないからです。

例えば次世代省エネ基準の達成率の状況から判断しても、住宅供給者の中に未だに省エネに熱心でない人たちがいることがわかります。また、仮に一次エネルギー消費量ベースで計算値が出せたとしても、それを実現できる施工力があるか、ということも新たな問題として出てきそうです。

では、現状で住宅供給者はどのような対応を見せているのでしょう。大手のハウスメーカーは、1999年の制度スタート開始直後から次世代省エネ基準を標準化する取り組みを進めてきましたから、あまり問題がないようです。現在では、一般的に大手と呼ばれるハウスメーカーなら、90%後半だとか100%に近い達成率となっています。

住宅の省エネ性・断熱性への姿勢は施工業者評価のポイント

HEMS

新たな省エネ基準は、住宅のエネルギーの需給状況を「見える化」するスマートハウスの考え方と連動する。HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)や、スマホなどもかつてなかった新しい技術だ(クリックすると拡大します)

ちなみに、このことは「大手ハウスメーカーはオーバースペック」と揶揄されてきた原因の一つだと思われます。次世代省エネ基準基準への対応の様子をみても、多くが「それ以上の性能」をうたい文句にしていますし、例えば耐震性能などでも同じことです。

これは、単に住宅の坪単価や総額で住宅の価値が評価できないということを表していると思います。言葉を換えると、新築後のメンテナンスコストやエネルギーなどランニングコストまで考えないと、住宅の本当の価値は見えてこないということです。

話を次世代省エネ基準の話に戻すと、大手ハウスメーカーは「一次エネルギー消費量」についても、「ゼロエネルギーハウス(ZEH)」の取り組みなどが進み、システムとしてはほぼ確立された状況で、改正後も大きな混乱はないと考えられます。

ただ誤解がないように申し上げておくと、大手ハウスメーカー以外の住宅供給者、例えば地域の工務店などでは次世代省エネ基準の改正に対応できないかというと、そうではありません。世の中には大手ハウスメーカー並か、それ以上に住宅の省エネ化を図ってきた工務店が確かに存在します。

要するに、私たち消費者はそうした真面目な工務店を選び取る確かな観察眼が必要になるというわけです。ですから、新たな省エネ基準への対応やこれまでの実績を調べることで、その工務店が信頼できる供給者なのかを判断する材料にできると思います。

逆に言うと、デザイン性やコストを優先するあまり、建物の断熱性能を犠牲にして住宅を建てている供給者も、残念ながら未だに多いということ。10月に新たな省エネ基準がスタートするということですが、基本的にこれからはそうした住宅は法規制上許されなり、いずれにせよ私たち消費者も住宅取得において省エネにより敏感にならざるを得ない時代が来ているということになります。
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