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14年ぶりの基準変更で住宅の省エネ化は新ステージに

2013年は、住宅の省エネ化について新たな動きがある1年となりそうです。それは、新たな省エネ基準がスタートするから。今回はその内容について考えていきます。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

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東日本大震災と原発事故の発生以来、エネルギー問題への危機感が高まっており、その克服には国民生活の省エネ化が急務といわれています。そうした背景により、今年は14年ぶりに住宅の省エネルギー基準が改定されることになっています。そこで今回は、その内容とともに住宅のエネルギーのあり方について考えていきます。

新たな省エネ基準への改正は10月に実施予定

断熱施工の模型

パナホームの断熱施工の模型。多くのハウスメーカーは、次世代省エネ基準の地域区分に合わせて、断熱材やサッシの種類を変更することで各地の気候に合わせた住まいづくりを行っている(クリックすると拡大します)

省エネ基準の改正は今年10月に行われる予定となっています。その内容を詳しくご紹介する前に、我が国における住宅の省エネのこれまでの動向を確認しておきたいと思います。現在の省エネ基準は「次世代省エネルギー基準」(1999年)と呼ばれています。

それ以前の「新省エネ基準」(1992年制定)に代わる基準としてスタートしました。実はさらにその前にも「旧省エネ基準」(1980年制定)というのがあって、つまり世の中のエネルギー問題の動きに合わせて、住宅の省エネ基準も変更されてきたということです。

特に、新省エネ基準以前の住宅については、欧米の住宅に比べて格段に性能が劣っていたといわれていました。そして次世代省エネ基準の導入により、ようやく我が国の住宅も欧米並みか、それに近い水準の性能となってきたといえます。

では、次世代省エネ基準とはどのような内容なのかというと、各県レベルで1~6(正確にはローマ数字が使われます)の区分に分けられており、それぞれに応じた建物の省エネ・断熱性能が求められます。

極端な例ですが、北海道と沖縄では全く環境が異なるわけですから求められる達成基準が異なるのは当然で、北海道では最も高い断熱性能が設定されています。ちなみに、断熱性能を表すのはQ値といい、これが小さいほど断熱性能が高いことを表します。

もう一つの特徴は、市町村ごとに区分が異なる場合があることです。例えば3地域の県の中にも違いが生じるケースがあるため、2地域や4地域の区分が適用されることもあります。それくらい、日本の気候風土は多様で複雑であり、それに対応する必要があるのです。

ハウスメーカーの場合、一般的に全国で同じ性能と仕様の建物を建てていると思われがちですが、住宅を供給する際には次世代省エネ基準の区分に沿って施工するのが普通であり、それぞれの商品はその基準以上の性能を有しているケースも多いです。

次世代省エネ基準の達成率の現状とは?

LED照明

LED照明によるキッチンの様子。住宅の照明としてすっかり定着したLED照明は蛍光灯や白熱灯に比べ使用電力が少ないのが特徴だが、これも次世代省エネ基準がスタートした1999年にはなかったものだ(クリックすると拡大します)

それでは次世代省エネ基準に適応した住宅は、現在どれくらいあるのでしょうか。色々な数字があるのですが、国の「低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議」の議事録(2010年6月)によると、住宅性能表示制度の評価を受けている新築住宅の中では約36%という数字がありました。

ちなみに、この住宅性能表示制度が適用されているのは新築住宅全体の約2割に過ぎないといいます。それを考慮すると、「新築住宅全体では次世代省エネ基準を満たしている建物は1~2割だろう」というのが、国の見方のようです。

一方で、国交省の「2011年度上半期における次世代省エネ基準の(新築住宅における)適合率は5~6割程度」という数字もあります。つまり、多く見積もっても新築住宅の約半数程度しか次世代省エネ基準に対応していないということになります。

さらにいうと、これは次世代省エネ基準が施行された後の話。ですから、それ以前の既築の住宅を含めた全住宅で考えると、省エネ性能や断熱性能に劣る住宅が圧倒的多数であるという、お寒い状況に我が国はあるのです。こうした経緯から、住宅エコポイント制度を実施するなど、国は既築の住宅も含めた住宅の省エネ性能の向上に努めてきました。

さて、次世代省エネ基準は1999年にスタートした制度であり、当時は太陽光発電やLED照明、家庭用蓄電池など、近年普及が進みつつある環境機器がない時代のものでした。新しい省エネ基準は、それらを反映したものになる予定ですので、そのことも含めて次のページで解説します。
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