クーぺシルエットで低く幅広、スポーティなA7
A7には300ps/440Nmの3リッター直噴スーパーチャージャーを搭載。アイドリングストップ機構やエネルギー回生システム、始動直後の暖機時に冷却水の熱を効率良く利用するサーマルマネジメントシステムなども備え、10・15モード燃費は10.2km/l
前述したように、A6ベースの5ドアハッチバックである。スタイリング以外、基本的なメカニズムその他は共有していると考えていい。ただし、ホイールベースが若干長く、ワイドボディで、トレッドも広い。その流麗なクーペシルエットと相まって、A6に比べると、断然に低く幅広く、スポーティにみえる。
ラゲッジルームの容量そのものは、実をいうとセダンのA6とほとんど変わらない。アバントよりも、少ない。けれども、ガバッとハッチゲートが、荷物の出し入れをラクにしてくれていることは、間違いないと思う。
ボクはこの、リアセクションの、ちょっと垂れ下がって、ライト面を覆いかぶすようにみえるサマが大好きだ。
他にあまり見かけないから、というのもあるけれど、素直に優雅なリアスタイルだなと思う。“尻下がり”は、日本市場で過去に成功した試しがなく、正直、一般にはあまり好まれていないわけで、だからこそ“へそ曲がり”の気を引くのかも知れない。
室内は、パッとみための印象こそA6と変わらないように見えるけれども、よぉく見比べてみれば、ダッシュパネルやセンタークラスター、ドアトリムのデザインがまるで違っていて、よりラグジュアリィな仕立てになっていることが分かる。
また、A7の高性能版であるS7では、マテリアル選びやディテールの仕上げが、まるで違う。デザイン的にはスポーツシートが目立つわけだが、コントラストカラーのステッチや、アルミ光沢仕上げのディテールもあいまって、もうひとつさらにラグジュアリィな仕立てのインテリアにみえるのだ。
S7はアウディテクノロジーの見本市
ノーマルのA7スポーツバックには、最高出力310ps/最大トルク440Nmの直噴3リッターV6スーパーチャージャーエンジンが積まれている。もちろん、駆動方式は最新の電子制御4WD、すなわちクワトロで、組み合わされるトランスミッションは7速Sトロニックで、ダブルクラッチシステムである。一方、S7には、直噴4リッターV8ツインターボエンジンを搭載した。420ps/550Nmを誇る強力なユニットで、S6/S6アバントも同様の仕様を積む。ちなみに、S8にも同じエンジンが積まれているが、アチラはさらにパワフルで、520ps/620Nmである。
この新エンジンには技術的トピックも多い。従来の同等モデル用のエンジン仕様に比べ、排気量を下げて性能を上げる、いわゆるダウンサイジングユニットというわけだが、これにアイドリングストップや気筒休止などを組み合わせることで、大幅な効率化を図った。
この気筒休止、つまり8気筒を4気筒に切り換えて使いこなすには、切換え時や4気筒走行時のノイズ&振動対策が必須となるが、最新のオーディオテクノロジーによって不要な雑音を打ち消し(ノイズキャンセラー)、電磁振動コイルアクチュエーター付きエンジンマウントによって不快な振動を抑制するという優れもの。実際、8気筒から4気筒、またその逆を、ドライバーやその他乗員が感知することは、試乗中、一度もなかった。
その他、アダプティブエアサスペンションやダイナミックステアリング、トルクベクタリングブレーキ、スポーツデファレンシャルといった、速く、そして安全に、快適に走らせるための最新テクノロジーも満載し、アウディテクノロジーの見本市のような仕様であるのがS7スポーツバックの特長だ。