別世界の詩仙境に迷い込んだかのような錯覚を感じる「詩仙堂」
詩仙堂は、徳川家康に仕えた戦国武将・石川丈山が、寛永18年(1641年)に隠棲して建てた草庵です。「詩仙」と言う名は、中国の詩人36人の詩を選んで、丈山自ら墨書し、絵師の狩野探幽に詩人の肖像画を描かせ、その額を掲げたことから称しました。
詩仙堂は、正しくは「凹凸か(穴編に果)」(おうとつか)と言います。「凹凸か(穴編に果)」とは、「でこぼこした土地に建てた住居」という意味で、丈山はここに十境を見たてました。
詩仙堂に一歩足を踏み入れると、まるで別世界の詩仙境に迷い込んだかのような錯覚を感じるのも、丈山ならではの意匠がいたるところに配されているからでしょう。
石川丈山は、武人でありながら、詩や文学、茶道に優れた文化人として知られますが、作庭の名手としても有名で、でこぼこの土地を上手く利用して、ふたつの庭園を造っています。
このふたつの庭園が詩仙堂の紅葉ポイントで、秋には、赤や紅、黄に覆われる紅葉谷の様相をみせます。
ひとつは、書院前の唐様庭園で、白砂にツツジ、サツキの低い刈込が配され、背後の木々を取り込むように工夫されています。秋の深まりとともに、背後の木々が赤く紅葉し、重層的な美しさを演出します。
砂の白、刈込の緑、紅葉の赤のコントラストが、まるで絵画のようで、書院の縁側に座って、静かに眺めるのがおすすめです。
もうひとつの庭園は、実際に降りて散策することができる、自然あふれる池泉回遊式庭園で、紅葉や散り紅葉が楽しめます。
この庭の奥からは、丈山が考案したとされる「鹿おどし」の音が響き、静かな庭に風情を添えます。
■詩仙堂(しせんどう)
住所:京都市左京区一乗寺門口町27
TEL:075-781-2954
拝観時間:9:00~17:00(受付は16:45分まで)
アクセス:JR京都駅から市バス一乗寺下り松町下車、徒歩5分
ホームページ:詩仙堂