四季折々に美しい表情をみせる庭
祇王寺の起源は、平安時代後期、法然上人の弟子・念仏坊良鎮がこの地に広大な寺域をもつ往生院を創建したことにはじまります。その後、戦乱などで荒廃して、ささやかな尼寺だけが残りました。その尼寺に隠棲した白拍子の祇王にちなみ、祇王寺と呼ばれるようになったと言われます。祇王の話は平気物語に詳しく語られます。武家としてはじめて太政大臣まで登りつめた平清盛の寵愛を一身に受けた祇王。しかし、その寵愛を同じ白拍子の仏御前に奪われてしまいます。
世のはかなさ、女人の哀愁を悟った祇王が母の刀自、妹の祇女とともに剃髪して尼僧となり、往生院跡の尼寺に隠棲します。後に祇王らの行く末を知った仏御前も加わって、女人のみで念仏三昧の余生を送ったと伝わります。
祇王寺の門をくぐり、石段を上って行くと境内に至ります。そこには茅葺の本堂と、その前に緑の苔に覆われた庭園が広がります。四季折々に美しい表情をみせる庭として親しまれますが、秋には真っ赤に色付いたカエデが、幾重にも散り紅葉となって苔の庭を埋め尽くします。
ささやかな草庵と庭園を囲むように生い茂る竹林の青と庭の苔の緑、そして、陽に照らされて光り輝くように散り積もる紅葉のコントランスが、晩秋の祇王寺の最大の見どころです。
紅葉の名所として知られる祇王寺には、この時期多くの観光客で賑わいます。しかし、不思議なことに、この尼寺はいつも静寂に包まれています。まるで、祇王ら女人たちの悲しみがこの小さな尼寺を包み込んでいるかのように…。
■祇王寺
・住所:京都市右京区嵯峨鳥居本小坂32
・電話:075-861-3574
・拝観料:大人 300円
・拝観時間:9:00~17:00(閉門16:30)
・アクセス:JR京都駅から市バス嵯峨釈迦堂前下車、徒歩15分
・URL:http://www.giouji.or.jp/