繊細であり、上品で、独創的。心に優しく切なく響く
私がいちばんと思うピアニストはフジコ・ヘミングです。なかでもアルバムCD『奇蹟のカンパネラ』はお気に入りです。彼女の演奏する曲の中で、『ノクターンOp.9 No.2』が個人的には大好きです。彼女の手にかかると、よりいっそう感銘を覚えます。繊細であり、上品で、独創的で…心に優しく切なく響きます。
また、フジコ・ヘミングという人がいちばんという理由に「画家」であることも含め、その人生感にも魅力を感じます。彼女が描く作品は、彼女の奏でる音楽と同じような…浮遊感、線と線の織りなす独特の空気感があり、上品かつ繊細で独創的です。
「ミスタッチを直そうとは思わない」。同じ曲でも時に全く異なる演奏をする彼女に対し、否定的な見方ももちろんあります。その一方で、どんなピアニストの演奏よりも、彼女の音色こそが心に響くと深く共鳴する人も数多くいます。
技術だけではない、人生観の素敵な、いちばんのピアニストだと思います。