巨匠ピアニスト アルトゥル・シュナーベル
日本では真っ先に名前が挙がらないようですが、海外で真っ先に名前が挙がるのはまずシュナーベルで、理由は恐らくあのブラームスからの評価もさることながら、ベートーヴェンのピアノソナタという、バッハの平均律クラヴィーア曲集と並び称されるピアノにおける基本楽曲の大成(全曲録音)にあるのでしょう。逆に言うとシュナーベルのベートーヴェンのピアノソナタの解釈は、当代きっての技量や才能と相まってピアニストであれば避けて通れません。
ピアノを弾かれる方はお分かりになると思いますが、暗譜をして弾くのはメリットとデメリットがあり、無視できないデメリットの一つは暗譜したつもりでも楽譜の厳密な意味での再現にはなっていない、というものがあります。それ故にほとんどすべてのピアニストが楽譜を見ながら弾くわけです。そうしないと容易に書かれたものを超えてしまう。
シュナーベルの評価や技量は、彼自身が語ったとされる
という言葉によく要約されています。簡単に言えば音符も休符も共に大切で、休符を書かれた通りに「弾く」時に初めて、音楽という芸術表現(この場合はピアノ演奏)が十二分に効果を発揮します。The notes I handle no better than many pianists. But the pauses between the notes? ah, that is where the art resides.
たとえば録音が残っていないリストとかは評価したくても評価できませんので、音源の残っている人の中からということになろうかと思うのですが、「不滅の巨匠」ぐらいの呼ばれ方をされる人たちというのは、それなり才能や見識ある人たちの間でおのずと明らかになるのでは、と思ったりします。
そういう人たち、つまり自ら音楽家であったり音楽評論を業とする人たちは、多くを知り多くを聴き多くを理解できるゆえに判断がおのずと一致する、という感じでしょうか。いえ、端的ジャズピアニストだとか、パフォーマンス含めてとか、誰が一番というのは諸説ありますが、クラシック界の識者たちはまずこの人を推しています、ということで。
■アーティスト名
アルトゥル・シュナーベル(Artur Schnabel)
■代表曲
ベートーヴェン・ピアノソナタ全集
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