太陽の根と呼ばれる大切な食べ物「きくいも」
生姜と見間違うような姿のきくいも
日本には江戸時代末期にイギリス人により伝えられて栽培が始まりましたが、はじめは家畜などの餌にしていたことから「豚いも」とも呼ばれていました。生命力が強く手がかからないので、戦時中に救荒作物として重宝され、栽培されたものが野生化したと考えられています。
現在日本でも全国各地の河原や道端などに自生し、その勢いで在来種に対し競合・駆逐のおそれがあるとされ、環境省から要注意外来生物に指定されています。
注目されるきくいもの成分・イヌリンとは?
近年きくいもが注目されるようになったのは、果糖が30個ほどつながったイヌリンという多糖質が多く含まれているからです。イヌリンは、キク科のチコリやタンポポの根などにも含まれていますが、きくいもの塊茎にはイヌリンが10~12%含まれています。イヌリンは消化しにくいため、血糖値の上昇を緩やかにするなどと話題になりました。国立健康・栄養研究所では、イヌリンについて、次のように解説しています。
イヌリンは非消化性の多糖類で、腸内細菌が利用できる食物繊維である。ごぼう、きくいもなどのキク科植物に多く含まれるフルクトースの重合体である。食品添加物としてもよく知られている栄養素で、俗に「血糖値の急激な上昇を防ぐ」、「コレステロールを下げる」などといわれている。ヒトでの有効性については、高トリグリセリド血症に経口摂取で有効性が示唆されている。安全性については、短期間、適切に用いれば経口摂取で安全性が示唆されているが、人によってはイヌリンを含む食品で重篤なアレルギーを起こすことが知られている。妊娠中・授乳中の安全性については充分なデータがないので使用は避けること。
イヌリンのヒトレベルの有効性は研究段階のようですし、またきくいもをいくつ食べれば効果があるということも明確ではないので、過大な期待はせずに、サプリメント等のような偏った食べ方はしないようにしたいものです。あくまでも食べ物としておいしくが基本です。
食品としては、生鮮品の他に、加工品としてお茶や、焼酎、お菓子等に使えるパウダー状のものも売られています。また大学等の研究機関では最近はイヌリンを分解してできるオリゴ糖から甘味料素材が、また燃料エタノールが開発されるなど、様々な用途に期待されています。