正にスポーツツアラーの称号がふさわしい
M157を積む最新モデルが、このCLS63AMGシューティングブレークだ。モデル概要については、以前のリポートを参照いただきたい。今回は、ようやく上陸となった日本仕様の試乗報告をしておく。内外装のデコレーションによるAMG化は、基本的にサルーンと同様の手法を採った。すなわち、前後左右の各種エアロデバイスに加えて、フロントトレッド増(+24mm)に伴った前フェンダーのワイド化、SLS AMGに似たフロントグリル、専用デザインのアロイホイールなどで武装している。
膨らんだ前フェンダーのサイドには、“V8 BITURBO”(V8ツインターボの意味)のエンブレムが誇らしげに輝く。リアからの眺めも、4本出しマフラーエンドと出っ張ったアンダーリアエプロンで迫力いっぱいだ。
インテリアでは、ピアノブラックのトリムパネルや、ナッパレザーのスポーツシート、アルミニウム製パドルシフト付きの新型3本スポークステアリングホイール、矩形のセレクターレバーなどが、AMGモデルの証となる。
取材車両には、オプションのデジーノ・ウッドフロアが装備されていた。高級ヨットのデッキをイメージさせる雰囲気で、CLSシューティングブレークのバーサリティによく見合っていると思う。
レーススタート機能、自動ブリッピング機能を備えたAMGスポーツシフトMCTを搭載。4つの走行モード、C(効率優先)/S(スポーツ)/S+(スポーツプラス)/M(マニュアル)、をもつAMGドライブユニットシステムも備わった
確かにがっちりとフラットなライドフィールはそのままなのだけれども、リアサスのシステムが違っている(ワゴン用)からだろう、サルーンとは少し様子の違った味つけで、端的に言ってよりしなやかに走ってくれた。
もちろん、ひとたびぐいっとアクセルペダルを踏み込めば、低速域から分厚いトルクが湯水のように溢れ出す。そして、その力強さを強固に維持しながら、高速域まで一気に駆け上がるエンジンパフォーマンスは、ただただ圧巻のひと言。共通点が多いなどと言ったノーマルのV8とは、まるで違うフィーリングである。
シートごと、背中から蹴飛ばされるような感覚に見舞われつつも、各種電子制御とよくできたシャシーのおかげで、大迫力の加速を思う存分、安心して楽しめた。延長されたルーフによるリアスペースの存在など微塵も感じさせない。
見栄え・走りともに、あらゆることを経験したうえでの豪快な決断を主張してやまない。そして、すこぶる使い勝手のいい、高性能なグランドツーリングカーでもある。正にスポーツツアラーの称号がふさわしい、新ジャンルのグランツーリズモ=GTが誕生した。
おそらく多くのプレミアムブランド、高級グレードが、このあとに列をなして続くことだろう……。