絶妙なバランスが生み出す、類い希なる一体感、楽しさ、気持ちよさ…スマート・ロードスターには忘れかけたものが溢れている。

スマート・ロードスターにおける絶妙なバランスは、車重820kgに対し82ps/11.2kgmというエンジン性能の「関係」によるところが大きいわけだが、他ではなかなか味わえないものだ。例えばその関係は、日本車でいうとリッターカークラスのもので、例えばトヨタ・ヴィッツなどがこれに近い。しかしスマート・ロードスターには、ヴィッツでは決して味わえぬ一体感、楽しさ、気持ちよさがある。なぜか? 答えは3サイズにある。

3430mm×1615mm×1205mmというそれは、ヴィッツに比べ210mm全長が短く、45mm幅が狭く、295mmも背が低い。日本の軽自動車唯一のオープンモデルであるコペンが3395mm×1475mm×1245mmだから、全長×全幅でスマート・ロードスターはひと回り大きいものの、全高では40mm低い。それでいながらコペンよりも軽量だ。

コペンよりも低くワイドなボディで、車重とエンジンの関係はリッターカークラス。日本の規格では実現できそうにもないその成り立ちが、一体感や楽しさ気持ちよさの原点となっているのである。

手に余らないどころか、フィット感が非常に高い大きさを持ち、それでいてリッターカー並の走りを持つのだから、もう想像の時点で既に楽しい気持ちよいクルマだと誰もが思うはずだ。この成り立ちこそ、スポーツカーの原点といえるほどである。

ただ、スマート・ロードスターに実際に乗ってみると、予想と現実のギャップに誰もが驚かされることだろう。ハードウェアの仕上がり具合としては、ハッキリ日本の軽自動車の方が上と思う人がほとんどのはずだ。


例えばスマート・ロードスターは、その姿からは想像できないほどスローなステアリングが与えられているし、6速の2ペダルMTもレスポンスは鈍く加速時にはつんのめる感じがあるし、シフトダウン時には操作から確実に一呼吸おいて作動が行われる。また後ろにエンジンを搭載する前後重量配分の関係から、ステアリングを通して手のひらに伝わる前輪の接地感は希薄だ。さらにワインディングの下りなどでスロットルを緩めると、明らかに巻き込む感じが伝わる。もっともこの辺りはESP標準装着という高い見識によって問題ナシといえるわけだが。

では果たしてなぜ、こんなスマート・ロードスターが楽しく気持ちよく、一体感が高いのか? 実はここまでで挙げたいわゆるネガティブな部分は、スマート・ロードスターにおいては決してネガティブな要素にはなっていないからである。