ドラマ/大河・時代劇

『八重の桜』が大河ドラマになった三つの偶然(2ページ目)

2013年大河ドラマ『八重の桜』、主人公は戊辰戦争で活躍し、後に同志社大学を創立した新島襄の妻となった新島八重ですが、以前は地元・会津でも知名度はありませんでした。そんな彼女がなぜ大河ドラマになったのか?

黒田 昭彦

執筆者:黒田 昭彦

ドラマガイド

東北復興支援

最後のひと押しになったのがNHKの東北復興支援方針。2013年の大河ドラマとしては別の企画が進行していました。しかしもう一度舞台を検討しなおして、福島県の『八重の桜』となりました。

あと4月からの連続テレビ小説『あまちゃん』とBSプレミアム1月11日からの大沢たかお主演『火怨・北の英雄 アテルイ伝』の二作は岩手県が舞台で、東北復興支援三部作となります。

負ける側の大河

さて『八重の桜』、ガイドが注目しているのは大河ドラマとしてはひさびさに歴史を負ける側から描くところです。

大河ドラマは基本、主人公は勝つ側です。一番人気は信長・秀吉・家康の天下人ラインだし、赤穂浪士ものは最後に本懐をとげます。源義経は身内には負けても平家相手には連戦連勝。『勝海舟』『徳川慶喜』『篤姫』の主人公が幕末の徳川家側の場合でもソフトランディングに成功したという描き方です。

これまでの大河ドラマで主人公側が最も負けてるというと『風と雲と虹と』と『獅子の時代』が双璧。
『風と雲と虹と』は時代は大河ドラマ史上最も古い平安時代中期、平将門(加藤剛)が主人公で、京都の朝廷、貴族により虐げられている関東武士の代表としてやむにやまれず反乱を起こし鎮圧されるという『平清盛』の前史的ストーリー。

『獅子の時代』は会津藩出身の平沼銑次(菅原文太)と薩摩藩から明治政府官僚となった苅谷嘉顕(加藤剛)の二人の架空の人物が主人公。幕府と薩摩藩がそれぞれ出展したパリの万国博覧会で二人は出会い、帰国すると戊辰戦争前夜で敵味方に。
平沼銑次はその後も五稜郭の函館戦争を戦い、佐賀の乱、西南の役といった士族の反乱に関わり、最後は自由民権運動に身を投じ秩父困民党事件で銃弾を浴びながら消えて行くと、幕末から明治初期にかけて徹底的に負けている側につきます。
苅谷嘉顕の方も大久保利通(鶴田浩二)の部下として働くが、父とも戦った西南の役に苦悩し、最後は伊藤博文(根津甚八)と対立し非業の死を遂げます。いい人イメージの加藤剛、『平将門』に続き誠実に生きて負けてしまいます。

巨匠・山田太一脚本による、史上最もラジカルな大河ドラマで『八重の桜』と同じ舞台ということもあり、たぶん「時代劇専門チャンネル」あたりで平行して放送するでしょう。ひょっとしたらNHK-BSプレミアムでもあるかもしれません。

 

負けた後どう生きるか

近年で「負ける大河」というと京都守護職だった会津藩主・松平容保(『八重の桜』では綾野剛)のお預かりだった『新選組!』と『天地人』でしょうか。『天地人』は上杉家が石田三成と同盟関係にあり、関が原の戦いに直接参戦していないものの敗者となります。負けながら徳川幕府下でどう生き残っていくのか?というのがなかなか興味深いテーマでした。

新島八重は戊辰戦争の後もたくましく生きていきます。日本が低迷している中、IMFから「女性が日本を救う」と女性の社会参加が求められている現状とどう相互反映していくんでしょうか。新しい道を示すようなドラマになることを期待しています。
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