DV被害者に児童扶養手当
親のDVは子にも悪影響が……。制度を上手に使って自分と子どもを守りましょう
児童扶養手当の支給は、かつては母子家庭だけが対象でしたが、平成22年8月からは父子家庭も対象になり、その後24年8月からは離婚前でも、DV被害者も対象になっています。DV被害者の場合、事実上は離婚状態にあっても、暴力をふるう夫(妻)との話し合いが進まず、離婚成立に時間がかかることが少なくありません。
子どもも幼く、生活に窮しがちな妻子(夫子)を支援するため、離婚前でも児童扶養手当の支給がなされるようになっています。
ただし、DV被害者がすべて児童扶養手当の対象になるわけではありません。「裁判所からの保護命令が出された場合」という条件に該当する場合に限られます。
裁判所からの保護命令とは?
DV防止法では、配偶者から暴行罪または傷害罪に当たるような暴行を受けたことがあるか、あるいは生命・身体に害を加えるとの脅迫を受けたことがあり、今後、配偶者からの身体に対する暴力によりその生命・身体に危害を受けるおそれが大きいときに、被害者は保護命令の申立てを行うことができることになっています。「保護命令」とは、夫(妻)からの身体への暴力を防ぐ目的で、裁判所が妻(夫)に近寄らないよう命じる決定のこと。6ヵ月間の接近禁止命令と、同居している場合は引越しをする準備等のため、夫(妻)に対して2ヵ月間、家から出ていくことと家の付近をうろつくことを禁止する命令です。
さらに必要があれば、子への接近禁止命令や親族等への接近禁止命令、電話等禁止命令などがプラスされることもあります。
児童扶養手当の概要
児童扶養手当の概要を整理しておきましょう。児童扶養手当は、申請して認定を受けることで、受付月の翌月から支給される手当です。手当は通常、年3回(12月、4月、8月)、前月分までの4ヵ月分がまとめて支給されます。*2019年11月分からは年6回払い(2カ月分すつ奇数月に年6回)に変更されました。
<受給資格者>
児童扶養手当は、下に当てはまる18歳に達する日以後の最初の3月31日までの子を監護している、父親・母親・祖父母など、子を養育している人に支給されます(子が一定の障害を有する場合は20歳未満まで手当が受けられる場合があります)。
●申請できる子の条件
- 父母が離婚した場合
- 父親または母親が死亡した児童
- 父親または母親が重度の障害(国民年金の障害等級1級程度)にある児童
- 父親または母親の生死が明らかでない児童
- 父親または母親から引き続き1年以上遺棄されている児童
- 父親または母親が裁判所からのDV保護命令を受けた児童
- 父親または母親が法令により引き続き1年以上拘禁されている児童
- 婚姻によらないで出生した児童を監護する場合 など
●申請できない場合
- 申請者と児童の住所が日本国内にない
- 申請者が母親(父親)の場合に父親(母親)が同住所にいる(事実婚を含む)
- 児童が児童福祉施設(里親委託を含む)に入所している
- 申請理由が遺棄・拘禁の場合で、理由発生から1年未満
- 申請者および児童が児童扶養手当より多い公的年金を受給している(老齢福祉年金を除く)
- 労働基準法等の規定による遺族補償を受けることができる
- 申請理由が父親または母親の障害の場合で、児童が父または母の年金の加算対象 など
児童扶養手当を受ける人または配偶者、扶養義務者(同居している請求者の直系血族や兄弟姉妹)の前年の所得が一定以上ある場合は、その年度は手当の全部または一部が支給停止になります。
なお、前年に受けとった養育費の8割も所得として算入されます。
<現況届>
児童扶養手当を受給中は、毎年8月に現況届を提出することが義務づけられています。この現況届を出さないと手当が支給されませんので、忘れずに提出しましょう。
また、2年間提出がないとその間の支給分についての手当を受ける権利が消滅するだけでなく、受給資格そのものが失われますので注意が必要です。
【参考図書】
「離婚を考えたときにまず読む本」(日本経済新聞出版社、豊田眞弓著)
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