どこまで自動化するか、といった課題も
「自動化」とは、例えばスマートハウスに搭載されているコンピュータプログラムが「暑い」と認識した場合、どう対応するかということです。人間の場合、暑いと感じれば「窓を開ける」「ブラインドで日差しを調整する」「エアコンをつける(調整する)」などの様々な方法を取ります。住宅内には様々なスイッチがある。例えばスマートフォンなどの一つの端末で、家電や設備のオンオフや調整をできるようになるというのもスマートハウスの将来像かもしれない(写真はイメージ。クリックすると拡大します)
以前、私は音声認識技術を取り入れた住宅の取材をしたことがあります。声や手振りで指示すると、ドアが開いたり照明が点灯するというシステムが取り入れられた住宅です。で、私はその取材を通じて「そんなこと自分でやったらいいじゃない」と思ったものでした。
例えば窓の開け閉めくらいは自分ですべきことではないでしょうか。そうすれば無駄な投資がなくなりますし、より健康的。過剰に快適性を追求することが良い住宅の条件ではないと思いました。もちろん、身体に障害をお持ちの方には必要な機能かもしれませんが。
申し上げたいのは、スマートハウスが本格的に普及する中で、コンピュータで制御すべき部分と人が制御する部分について、しっかりと区別する必要があるのだろうということ。言葉を換えると、スマートハウスに導入すべき機能やサービスはまだ確立の途上で、より人に優しく使いやすい住宅となるために様々な取捨選択が必要であるということです。
一方でシンポジウムではこんな話も。「住宅にはセンサーが少なすぎる」というのです。自動車はクルマのオートロックをはじめセンサー技術の塊。かたや住宅は、家族の安全や財産を守る器であり、かつ高額なものなのですから、よく考えてみれば自動車並みにセンサーが取り付けられていても、おかしな話ではないように思われます。
スマートハウス開発が新たな製品やサービスを生み出す契機に
センサーは1個1000円程度だそう。住宅の各窓に設置してもたいした金額になりませんし、それを設置して防犯対策などが強化されるのでしたら安いものです。「なぜ今まで導入してこなかったのか」という大和ハウスの技術者の言葉には説得力がありました。これは、これまでの住宅の既成概念から離れて、スマートハウスの時代を考えなければいけないということの代表例。そういえば、現代の住宅にはやたらとたくさんスイッチがありますが、これも一括して操作を行えるよう改善する余地があるかもしれません。
ところで、シンポジウムではヤフーのスタッフの方々や大学生によるデモンストレーションも行われました。これはスマートハウスの中で将来、どんなサービスが提供され、消費者がどのような利益を得られるのか、考えさせてくれる内容でした。
ここではその内容をご紹介しませんが、正直なところどれも私にとっては「本当に実生活に必要かな」と思うものばかりでした。というのも、スマートフォンなどのアプリがベースになっているようで、アイデアがその範疇を抜け切れていないように思えたからです。
ですが、決して悪いといっているわけではありません。それぞれのデモンストレーションは住宅の中の実体験が乏しい中の限られた環境で発想されたサービスですから、仕方がないことではあるのです。むしろ、住宅の業界の人間では、発想し得ない新たなアイデアが生まれ、それがこれからの住宅の世界を変えていくのかも、と思いました。
それは現在、省エネ住宅として認識されているスマートハウスの価値観を大きく変え、より快適で人に優しい「賢い(スマートな)」住宅へと変貌させていくことにつながると思います。その変化は、この文章を読んでくださっている皆さんのアイデアから生まれるのかもしれない、そんな可能性も感じました。
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