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ブニアティシヴィリのショパン作品集

マルタ・アルゲリッチの再来とも言われる期待の若き星ブニアティシヴィリのショパンは、特徴であるピアニシモ(弱音)が際立ち、クールな中にメランコリーが漂う秀演。

大塚 晋

執筆者:大塚 晋

クラシック音楽ガイド

ブニアティシヴィリのショパン作品集

ブニアティシヴィリのショパン作品集

ブニアティシヴィリのショパン作品集

“ピアノの詩人”と言われるショパン。ピアノの可能性を拡大した華やかな技巧と、ジョルジュ・サンドとのロマンス、追われた祖国ポーランドへの思い、肺結核に悩まされた病弱さなどに由来する美しい音楽が魅力です。

名演は多いですが、また新たな時代の名盤CDが。

モノクロームの追憶――

カティア・ブニアティシヴィリによるこのアルバムを聴いての印象です。

1987年グルジア出身。名女流ピアニストであるマルタ・アルゲリッチの再来とも言われる期待の若き星。

特徴は、クールな音運びと、儚(はかな)すぎるピアニシモ(弱音)にあります。
ショパンは、ともするとロマンティシズムに溺れた甘ったるい演奏になってしまう場合もありますが、彼女は徹底してクール。確かな技術に裏付けされ、激しい打鍵で音階を昇る。が、突如、それまでの流れを止めて、極端にテンポを落とし、消えるか消えないかの儚いピアニシモ……。それは楽しかったモノクロームの記憶を思い出し、薄氷に触れるよう。宙を漂うメランコリー……。

これだけでも儚さと美しさに酔いしれますが、彼女がさらにすごいのはここから。彼女はこのまま悲観し続けません。彼女は過去は過去として受け入れるように、再び前を向き、進むのです。

この繊細なメランコリーと、底の部分でのポジティブさ。これがこのアルバムの魅力だと感じます。

そして、僕らはこの印象が間違っていないことに気付くのです。

それは、ボーナス映像として入れられた彼女の着想による「ワルシャワ ― パリ」と題された映像作品(ショパンはワルシャワを追われるようにパリへ向かい、その地で生を終えた)。モノクロ映像の中、街を去るブニアティシヴィリは、恋人との楽しかった日々を追憶するが、前へ向かう。

人生のとても大事なメッセージをもらうかのようです。

ただ目の前にある楽譜を弾くのではなく、若いながらもこの把握力と構成力と実行力、そして何より音楽の美しさ。只者ではありません。

この難しい名前、今から覚えておいて損はしません。

ブニアティシヴィリ:ショパン作品集
ワルツ第7番
ピアノ・ソナタ第2番「葬送」
バラード第4番
ピアノ協奏曲第2番(指揮:パーヴォ・ヤルヴィ オーケストラ:パリ管弦楽団)
マズルカ第13番

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