六本木ミッドタウンや新宿伊勢丹など、いつも話題のスポットに出店してきたTIME & STYLEが、9月11日、中国・上海に新ショップをオープンしました。出店までの経緯や上海の様子について、代表の吉田龍太郎さんにうかがいました。

突然訪れた上海出店への道

TIME&STYLE

TIME & STYLE上海店。日本のライフスタイルを中国に伝える拠点のひとつとして注目されています。

Q:この時期の上海出店には驚きました。出店のきっかけを教えてください。


昨年(2011年)12月に上海出店の打診を受けるまで、自分は中国に行ったこともなく、上海にショップを開くとは想像もしていませんでした。出店を希望されたのは、中国で建築・インテリア雑誌を発行している出版社の王社長です。

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吉田龍太郎さん(中央)と広報担当の佐竹さん(左)。

私達たちは今、日本の伝統工芸をアレンジした新しいモノづくりを海外に紹介する「JAPAN STYLE」という展示会を企画しています。昨年、上海の見本市(インテリア ライフスタイル チャイナ)を初めて視察した際、王社長はじめ中国の建築家、インテリアデザイナーの皆さんとお会いする機会がありました。その時に、王社長から当社とのパートーナーシップについての可能性を打診され、帰国後に王社長のビジネスパートナー・安田玲美さんから事業の説明を受けました。

安田さんは18年前に単身中国にわたり、住設関連企業などのコンサルティングを続けてきた方で、日経「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2012」にも選ばれています。中国で鍛えられた彼女の言葉には説得力がありました。しかし加速度的な開発の進む上海のスケール感、スピード感の中では、我々の目指すインテリアの姿は似合わないのではないかとも感じました。

Long

上海出店にあわせ開発された新作「Long」。中国の李朝家具をリデザインしています。

実は王社長は、日本の生活をまるごと海外へ輸出しようという試み「HOUSE VISION」の中国側の企画者のひとりで、日本のインテリア業界をよく理解されていました。急成長した中国では、富裕層のインテリアといえば部屋の大きさや絢爛豪華な装飾など、パワーを見せつけるようなスタイルが人気でした。しかし今、上海などの大都市では住空間の密集化が進み、住宅価格も上昇する中で、新しい価値観を求める生活者が増えていると、王社長は考えているようでした。質の高い都市生活においてはアジアのなかでも長い実績をもつ、日本人の暮らしに可能性を感じたのだと思います。

中国には十年以上前からヨーロッパの一流インテリア企業が多数進出し、モダンデザインのインテリアはすでに浸透しています。一方日本にとっての中国は、家具や設備の生産拠点であり、そこへ「家具を売る」という発想は持っていませんでした。しかし、同じ箸を使って食事をする文化圏のライフスタイルは、中国の生活によりフィットするのではないでしょうか。

あえてフェアなビジネスに

Q:ショップのデザインや具体的な準備はどのように進めたのでしょうか。

王社長からは「日本側の負担が出来るだけ大きくならないように配慮したい」といわれました。しかし私たちとしては、出店して共に成長してゆくパートナーとなるからにはフェアな関係で出店を進めたいと考え、家具などの製品提供や、ショップのデザイン、施工管理、中国人スタッフ教育などは日本側で行うことにしました。

フェアな関係というのは、金銭や手間だけでなく、お互いの長所を生かしていこうということです。例えばショップのメンテナンスや商品説明のノウハウは、我々のショップを軌道にのせるため最も大切なことです。一方、中国との商習慣、政治的慣習の違いは、中国人パートナーなしにはクリアできない問題です。短期間で上海ショップを開店できたのは、お互いのバランスを上手くとれた結果と思います。
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寝室とリビングを一体化した空間。床壁や天井、間接照明まで作り込み、現代日本の生活感を伝えています。



とはいえ問題も色々とありました。ショップの施工はこちらの思惑通りにはいきませんでした。内装というものは同じ材料を使っても、納まりや仕上げでまったく違ったものになります。中国の職人たちにそれを理解してもらうのは大変でした。なぜ言った通りにしてもらえないのかと最初は憤りましたが、それは価値観の違いから生じることで、根気よくこちらの考えを伝えていけば、素直に理解してきちんとやり直してくれる。手仕事を多くこなしているだけあって、職人個人の技能には非常に高いものがあると感じます。

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