提案の内容は、
(1)男性の居場所の確保
(2)女性のシングルスペースの充実
(3)広いリビング
(4)夫婦が社会とつながるための空間

の四つです。

夫婦それぞれの「居場所」の確保が重要

まず、「男性の居場所」の確保。定年後の男性は家庭内にいる時間が長くなるものですが、現実には専用の趣味室やくつろげる場所を確保しているのは2割程度だそうです。「散らかしっぱなしでも構わない空間を作っておくことが大切」としています。

籠もり感のあるスペース

キッチン・ダイニング(左側にあります)の横に配置された書斎のようなスペース。1階床から一段下げられており籠もり感がある。夫婦のどちらかの居場所として良いスペースかもしれない(クリックすると拡大します)

一方、女性にとっても配慮が必要というのが(2)の「シングルスペース」の充実。この年代は夫婦であっても1人の時間を大事にし、特に女性はプライベートな時間の充実を求めているといいます。「夫婦別寝でなければ、別にくつろぐ部屋が必要」といいます。

(3)の「広いリビング」は、夫婦が時間を共有できるようにするための配慮で、「自然と会話が弾む場づくりが重要」と指摘しています。仮に狭いリビングだと、夫婦のどちらかだけのスペースになりがち。夫婦の目線を適度に遮ることができるしつらえのリビングなら、お互いの気配が感じられて良いのかもしれません。

そういえば、私の実家でもリビングは母の居場所になり、父がここで過ごす時間は少なかった様に思います。その際、父は自室に籠もりっきりになっていましたが、そう考えるとまだ私の実家の場合はまだ父の「居場所」はあった方ではないかとも思われます。

最後の「社会とつながるための空間」とは、オープン外構などとすることで開かれた自宅を演出すること。特に、女性の方はご近所付き合いが活発なので、そこが快適な居場所となる可能性があります。地域とのつながりをうまく住まいの取り入れることが、夫婦関係を良好に保つことにつながるということでしょうか。

ところで、「夫婦別寝」という言葉が出てきました。これは夫婦の寝室が別々であるということです。私の両親もそうでしたが、実は中高年の夫婦の場合、こうなるケースが多いといわれています。皆さんのご家庭やご両親はどうでしょうか。

「夫婦別寝」に代表される生活様式の変化に対応するためには?

夫婦の就寝スタイルは、結婚当初は「リ」の字、次いで子どもが生まれると「川」の字に変化します。その後、子どもが大きくなり一人で就寝すると、夫婦の就寝スタイルは「リ」の字になるのか、もしくは「1」の字の別寝と分かれることが多いようです。

主寝室

夫婦が一緒に就寝する主寝室の事例。ただ、将来的には「夫婦別寝」となる可能性もある。その時にどうするのか、新築の段階から検討しておくことも必要かもしれない(クリックすると拡大します)

つまり、このような就寝スタイルがあることを考慮しながら、住宅の設計や間取りの配置を考えておく必要があるということになります。夫婦の関係性とは、年月を経ることに変わるもの。関係が円熟していくと、例えば就寝スタイルに変化が現れていくということです。

もっというなら、住宅には夫婦や家族のライフスタイルの変化に対応できる機能が求められるということになるかもしれません。様々な変化に対応できるよう、可変性のある住まいを目指すことが大事になるわけです。

特に狭い敷地に建つことが多く建築面積が少ない都市型住宅の場合、こうした配慮はより重要になってくると思います。将来的にライフスタイルや家族構成、体調の変化が発生しても、あまり費用をかけずに可動できる間仕切りを採用するなどし、間取りがフレキシブルに変えられるよう配慮しておくことも、新築の段階から検討しておいた方がよいでしょう。

現在になって定年後の夫婦の暮らし方に注目が集まっているのは、従来の住宅では将来のライフスタイルの変化を見越した設計が行われていなかった、ということです。ですから、若い世代の方々には是非とも自分の実家で両親がどのように暮らしているのかにも注目し、そこで問題となっていることを考えながら住まいづくりを行っていただきたいのです。

住まいづくりのヒントは、私たちの身近なところに転がっているともいえるのだと思います。なお、今回ご紹介した住環境研究所の提案は「シングルミックス」という専門サイトでも紹介されていますので、参考にしてみてください。
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