住まいづくりを検討するポイントは様々ありますが、家族に長く愛される質の高い住宅を目指すなら、是非おさえていただきたいことがあります。それは将来の夫婦関係へ配慮した住まいづくりです。具体的には、夫(だけとは限りませんが)の定年後まで見据えた空間取りや空間設計のあり方について。これは団塊世代の大量退職という問題から最近になってクローズアップされるようになったことですが、若い世代の皆さんの住まいづくりにも参考になることなので、関心を持っていただきたいと思います。

男性は定年後、自宅での居場所に困る

まず最初に私事で恐縮ですが、私の実家でも父の定年退職後、色々なドラマがありました。父自身は退職後、趣味を作ろうと様々な場所に出かけていましたが、それでも母は当初戸惑っていたように思います。これまで、父の出勤後は半ば自由な時間だったのに、あれやこれやと気苦労が増えたからです。

間取りと空間設計

空間や間取りについては、将来のライフスタイルの変化を見越して検討したいもの。子育て期だけではなく、夫婦2人になった際にも暮らしやすく使い勝手の良い住宅を目指すべきだ(クリックすると拡大します)

父が毎日出かけていたのは、今振り返ると実家の中に自分の居場所がなかったからだと思います。実家は結構広かったですから、「場所」そのものは確保されていたのだと思いますが、おそらく家人のことを気にせず、もしくは緩やかに家人の存在を感じながらくつろげる場所がなかったのだと思います。

父はその後、重い病にかかり一昨年亡くなりましたが、結局、父にとっての「居場所」が実家の中には本当にあったのだろうか、と思わずにいられません。言葉を換えると、父が定年後の第二の人生を満喫できたのかと。

一方、母は父の看病疲れもあり、心身ともに疲労が著しかった時期がありました。おかげさまで現在は、シングルライフを満喫し愛犬と楽しそうに暮らしていますが、私と同様に父が晩年の暮らしに満足していたのかと考えることが多いといいます。で、このような身内の話を紹介したのは、皆さんに参考となることがあると思われるからです。

若い世代にとって、住まいづくりは子育て期を中心に検討することが多いものですが、実は子育て期というのは人生の中でそう長い期間ではなく、せいぜい20~30年くらい。それ以外の夫婦2人で暮らす期間の方が長くなることもありますから、その期間のことを考えて住まいを検討することも重要になるのです。

定年後の夫婦の暮らしの実情とは?

広いリビング

広めのリビングの事例。リビングとキッチンの間に適度な距離があり、さらにキッチンからリビングが見えないようになっている。夫婦は交わらないものの、お互いの存在が感じられるように配慮されたものだ(クリックすると拡大します)

では、定年後の夫婦2人の暮らしの中で、夫婦はどのようなことを考え、住まいに対してどのような意識を持っているのでしょうか。このことに関して、スポットを当てた調査がありますのでここでご紹介したいと思います。セキスイハイム(積水化学工業住宅カンパニー)の関連会社である住環境研究所が発表した、「定年後の夫婦2人の暮らし方調査」です。

この調査は、中高年(55歳以上)の夫婦の定年後の暮らしと住まいについて、夫婦意識や生活意識についてスポットを当て、住まいに望むことを把握することが目的となっています。ポイントは、以下の5点に集約されています。

(1)ひとりの時間を大切にし、自立した暮らしを望む
(2)男性は家事にいそしみ、家庭での役割を果たそうと努力
(3)女性に比べて男性は社会・友人との交流意識がやや低く、逆に女性は外に目が向く
(4)男女とも自分専用の空間として「趣味室」を希望
(5)体が弱ったら助け合い、共有の時間を多く持ちたい


ここでは、調査の具体的な内容については割愛(詳しくはこちらをご覧ください)しますが、一ついえることは夫婦のうち、やはり男性の方が、定年後の新生活について苦労しているのだと思います(念のために申し上げますが、決して女性が苦労していないと申し上げているわけではありません)。

例えば、調査項目の中に「充実させたい時間」という質問があるのですが、「夫婦一緒の時間」は男性が42%で、女性は24%。「友人との時間」は女性が21%で、男性は13%となっています。この結果から、定年後の人間関係のあり方で男性が苦心している様子が見え隠れしていますね。

次のページでは、この調査結果を受けた住環境研究所による提案があるので、それについて考えていきたいと思います。