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箱根で村野藤吾の美意識を読む。

【石川尚の『美品散歩』#13】散歩がてらにブラリ立ち寄る場所がある。散文・スナップで気になるモノ・ココロを綴る。今回は「箱根」。日本建築界の巨匠:村野藤吾氏の美意識空間を楽しんできました。

石川 尚

執筆者:石川 尚

ファニチャーガイド

石川尚のファニチャーイスト的ココロ・『美品散歩』#13

ここは森の中の体内か


東名御殿場から車で30分ほど走ると、峠越え、仙石原、芦ノ湖・湖尻が見えてくる。芦ノ湖を右手にその先を抜けると箱根園、そして目的地・箱根プリンスホテル。

あいにくの天気だが、しっとりした湿気のかおりも箱根ならではのもの。
右手の森林にあるコテージもそうだが、この本館エントランスも周りの樹木よりかなり低く、軒を大きくとっているから建物全体がまるで森に埋もれているかのように目立つこと無く佇んでいる。
実際、芦ノ湖の遊覧船からもこのホテルは木々に隠れて見えないのである。


箱根の森に大きく低層にたたずむホテルの正面玄関。


この箱根プリンスは、日本建築界巨匠のひとり、村野藤吾氏の設計で1978年に竣工、2007年にリニュールされたばかりである。あの小泉元首相の夏休暇はきまってこのホテル。マスコミ報道でよくこの景色が報道されていたことは記憶にあるだろう。今回偶然レストランで小泉氏をお見かけした時は、驚いた。

さて、話を戻そう。
1963年に建てられた日生劇場のあのうねるような曲面の壁面や天井のデザインで自ら「自由主義的建築」と提唱した建築家:村野藤吾。
実に天真爛漫、力強い有機的な造形美の中に鋭く繊細な視点が見えてくる村野氏の建築は、佇まいが自然で、そして微笑ましい程愛くるしい。

天井高の低いホテルエントランスを抜けてロビーに入ると、両サイドからの森の光と高天井の空間がひろがる。


赤オレンジのカーペットと天に吸い込まれていくかのような………
写真をクリックすると、全体風景が拡大されます。
吸い込まれた天井の先には日生劇場やグランドプリンスホテル高輪・宴会場「飛天」の天井や壁面でおなじみの“アコヤ貝”が埋め込まれ、怪しげな雰囲気を醸し出している。


褐色の木肌とコバルトブルーの奥天井に貼られたアコヤ貝のキラキラした反射光が美しい。


このロビーは独特な造形の天井に目を奪われてしまいがちだが、両サイドの待合いスペースがとても効果的に配置された空間である。高い天井に対して低く品格のある家具、調度品が実にいい。

そこには、村野藤吾の美意識を凝縮した椅子がある。





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