「しぜんごこちの家」には、そのベースとなった実証実験棟の「移ろ居」(うつろい)という考え方が反映されています。その考え方を簡単に説明すると、住宅内のスペースはもっと様々な居場所があっていいのでは、ということです。

スペースの使い方を限定しない設計の手法

キッチン&ダイニング

1階の表側に配置してあるキッチン&ダイニングスペース。左横の食器棚上部にも窓(明るい部分)があり、これも住宅内の空気の流れを配慮したものだ(クリックすると拡大します)

もう少し詳しく説明すると、住宅内には風通しが良い場所・そうでない場所、日当たりがいい場所・柔らかい日差しがある場所など、様々な場所があり、住まい手はその時にしたいこと、その時の気分で居場所を変えていきましょうということです。

皆さんは自宅にいる時の居場所は結構、限られてはいませんか。私の場合は、リビングのソファーにべったりで、その他のスペースにいることはあまりありません。これって、それは実にもったいないことですね。

そうならないように、「しぜんごこちの家」では前ページでご紹介したようにダイニングキッチンは日当たりの良い窓辺に、その窓辺に付属するようにベンチが設けられています。このベンチで読書をしたり、お茶を飲んだり、うたた寝したっていいわけです。

畳室

1階にある畳室の様子。写真のように庭を眺めたり、寝転がったり本を読んだりと、その時その時の日射や風の通りに合わせ、思い通りのスタイルで過ごすことができる(クリックすると拡大します)

畳室は1階床から膝高の段差があるスペースとなっています。お庭の風景を眺められる居心地の良い和の空間で、もちろん畳があるので横になっても快適。それに加え、リビングに面して机がしつらえており、ここで座って読書したり、子どもが学習したりも可能です。

段差の上にある畳室は、畳を外すとその下は収納スペースに。ここに普段あまり使わないものを収納することができるわけです。またこのスペースを利用し、掘りごたつのような使い方も可能です。つまり、「しぜんごこちの家」は、スペースを一つの使い方に限定しないという設計手法でもあるのです。

このような「移ろ居」の考え方が、(2)「自然に合わせる」ということなのですが、自然に合わせることの効果に調体機能があります。要するに、風や光の動きに合わせ、自らが気持ちがいいと感じる場所へ移動することでリラックスでき、そのおかげで体調がよくなるということです。

自然を生かした住宅は家族を自然につなぐ住宅となる

ところで、気持ちが良い場所が住宅の中にあるとそこが家族が集まる場所になります。そして、それが住宅内にいくつもあると、(3)「家族を自然につなぐ」ことになるわけです。家族といっても、いつもべったりでは少々窮屈。適度な家族との距離感を保つことも大切になります。

畳室の机

畳室の前面は、1階床との段差を利用した机が設けられている。こちらも、その時の気分に合わせて様々な活用ができそうだ(クリックすると拡大します)

例えば、1階にLDKと水回り(バス・トイレ)がある単純なプランを考えてみましょう。この場合、家族の居場所はリビングとダイニングに限定されてしまいます。「しぜんごこちの家」は、ここに畳室(場合によっては水回りは2階に配置)と、窓辺のベンチなどがプラスされています。

こうすることで、リビングとダイニングのほかに、ダイニングとベンチ、リビングと畳室など、単純な集合ではなく、変化のある集合が生まれてきます。変化があるということは、そこで家族それぞれが多様な暮らし方を楽しめるということです。

さらに、家族が適度に距離感を感じられるために、視線を調整することも重要になります。「しぜんごこちの家」では、畳室からダイニング、その横にあるベンチなど、視線が通らないスペース配置が行われています。こうすることで、それぞれの様子は見えなくても、何となく家族が何をしているのかわかるわけです。

実はこうした配慮は重要なのです。年齢を重ねるごとに夫婦の距離感や子どもとの距離感は大きく変わってきます。それに、どんなに仲の良い夫婦・家族であっても、何となく顔を合わせるのが嫌な時だってあるはずです。そんな時、このような微妙に隠れた場所って何気に居心地の良い場所となるのです。

最後に「しぜんごこちの家」についてもう少し指摘を加えるなら、これが都市の住宅にとてもメリットがあるということ。比較的スペースを取りやすい郊外型住宅ならこのような配慮は必要がないかもしれませんが、都市型住宅ではスペースが限られていますから、スペースを限定しないという、このような設計配慮が有効になるのです。

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