住宅は設計の仕方で、自然の風や光を取り入れた快適な居住空間となるといわれています。では、その理屈はどのようなものなのでしょうか。様々な要素がありますが、このシリーズでは、第1回目として旭化成ホームズ(ヘーベルハウス)「しぜんごこちの家」(街かどへーベルハウスアトラス上大岡ガーデン)を実例に考えていきたいと思います。

自然環境を生かした住宅の実需タイプのモデルハウス

開口部

1階の最も奥まった場所にある脱衣所・洗面台の上部にある窓。このような風の出口を用意することで、自然な風の流れを作り出すことができる

旭化成ホームズでは2009年に茨城県つくば市に「移ろ居」というテーマで実証棟を建設して、自然環境を生かした快適な住宅のあり方について研究を進めていました(詳しくはこちらをご覧ください)。「しぜんごこちの家」はその第二弾という位置づけで、「移ろ居」実証棟の実需版の建物であるといえます。

ちなみに「しぜんごこちの家」は、神奈川県横浜市港南区にある「アトラス上大岡」(33区画)という分譲地内にモデルハウスとして建設された建物です。すぐ隣の敷地には、同社が販売するマンションも建設中です。

さて、「しぜんごこちの家」は、大きく三つの考え方で設計されています。
(1)自然を取り入れる
(2)自然に合わせる
(3)家族を自然につなぐ


階段

蹴あがり部分がない階段。これにより部屋に流れてきた風を遮ることがなく、2階から流れてきた風を1階に呼び込むこともできる。日射に関しても同様だ(クリックすると拡大します)

まず「自然を取り入れる」についてみていきましょう。ここで自然というのは「風」「光」のことですが、そのうち風については「風の出口を作る」と「上空の風を利用する」の二つの提案が盛り込まれています。

前者は入り口があっても出口がなければ、風が住宅内を通り抜けないことに注目。これを可能とするため、「しぜんごこちの家」では、風の入り口になる住宅の表側のスペースにキッチンとダイニングを配置しています。

一般的には、表側のスペースは日当たりの良い場所ですからここにリビングを配置するのが普通。しかし、逆に奥側はキッチンや水回りが配置するため窓がとれないことが多くなります。そのためあえて表側にキッチン&ダイニングを配置し、大きな窓を取りやすいリビングを奥側に配置するというわけです。

次に「上空の風を利用する」について。ここで言う上空の風とは2階以上に吹く風のことをいいます。地上で風が吹いていないように感じても、上空では風が吹いていることがよくあります。その風を積極的に利用しましょうということです。

風がないようでも上空に風が吹いている!

上空の風を呼び込むには天窓が有効。そして1階と同様に、風の出口を用意することが大切です。特に2階は個室になることが多く一般的に締め切られた空間になりがちです。そのため、「風の廊下」と呼ばれる工夫が盛り込まれています。これは個室のドアなどに風の通り道を用意するというものです。

また、階段や吹き抜けを通じて、「風の廊下」を流れる風を1階部分に流す工夫も取り入れられていました。階段は腰板のないタイプ。これにより風は踏み板と踏み板の間を通って部屋全体に行き渡るというわけです。

階段前のスペース

2階の階段上部の様子。大きな開口が設置されており、風や光を室内に取り込みやすくなっている。窓の下にベンチが用意され、「居所」が作られているのにも注目(クリックすると拡大します)

次に「光」について。近年、住宅の中に光を取り入れる場合、夏と冬とでは日射の角度が違うということがポイントとされています。夏は太陽は高いところから、冬は低いところから照らすということです。ですから、軒の出により日射角をコントロールしましょう、となるわけです。

「しぜんごこちの家」では、さらに日射は時間と共に移動するということに注目しています。つまり、日射の動きに合わせて、住まい手自身が移動すれば日の光や暖かさを得られる、そうした設計の配慮が必要ということ。言葉を換えると、日の光に合わせて体を移動できるような居場所を作るということです。

「しぜんごこちの家」では、ですから日射の取り入口となる大きな窓の側にベンチや畳室を設けてあります。当然、窓に近いわけですから風流れや自然とのつながりを感じやすい、居心地の良い場所となっています。

次のページでは、「しぜんごこちの家」の「自然に合わせる」「家族を自然につなぐ」という点を見ていきます」。