この「大阪アースダイバー」、異色の大阪本です。縄文時代にまでさかのぼり大阪を読み解いていくのですが、かなりユニークな発想です。かつ難解です。

大阪は複素数の街!?

大阪を読み解くポイントは、南北ー東西に通る二軸にあるというのが著者の主張です。上町台地を中心に南北に走るのが、この世に秩序をつくるアポロン軸。そして大阪湾から生駒山に向かい東西に走る死と再生の軸であるディオニュソス軸。この二軸で大阪の構造が作られているということです。

そしてこの二軸で大阪を表すのに「複素数」という表現を使っています。南北軸を「実数」、東西軸を「虚数」として「原大阪の心性は、X+Yiという複素数であらわされることになる」なんていう下りを読んでいると「大阪よ、そんなに深かったのか!」という気分になります。

他にも、「ナニワの商人が大切にした暖簾と、アメリカ先住民がときには命よりも大切にしたトーテム紋章は、同じ精神に根ざしている」と商家の暖簾の意味をアメリカ先住民に求めたり、通天閣を「この塔を上町台地の崖の上から『見下ろした』とき、それが湿気をおびた女性的な場所からそそり立った、太くて短い、愛嬌のある男のものであることは、明白である」と男根と見立てたり、長く大阪に住んでいるのに全く想像だにしなかったものとの共通点を示してくれます。

「ディープな大阪」にも切り込みを入れた一冊

もう一点この本で注目すべきは、被差別民や韓国民族と大阪との関わりも真正面から論じている所です。大阪紹介本の多くがこのような内容については「大阪のディープな場所」といった表現をするだけにとどめたり、せいぜい「コリアタウン」の紹介止まりですが「大阪アースダイバー」においては、このあたりの話題にもきちんと切り込んでいます。

コリア世界(本書では朝鮮半島の国/文化を「コリア世界」と表現しています)の地層は半島から渡来民が多くきた「古層」、近代に帝国主義で半島から多くの人が労働力として日本にきた「中層」、そして韓流ブームの起きた「表層」と三つの時期に分類し、その流れを地域に結びつけて持論を展開しています。

ところで、この「表層」への変化をもたらした韓流ブーム。これに最も早い時期に反応したのは「大阪のおばちゃん」であり、その「大阪のおばちゃん」は今、橋下市長の動向に少し疑問を感じ始めているとも指摘。いやいや「大阪のおばちゃん」、ただ者ではありません。

全体を通して、書かれていることが正しいかどうかは検証のしようのないことも多く、「大阪についての知識」を仕入れるために読むというよりも著者中沢新一が書く壮大な歴史物語を読むといったほうがしっくりとくる一冊です。この本を読んだ後、物語の舞台となった場所を訪れると、ちょっと見え方が違ってくると思いますよ。

 

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