シャンピニオン形式テーブルって?
1947年の秋、開催が発表されたニューヨーク近代美術館(MoMA)主催の『ローコストファニチャー国際設計競技』。「世界の大多数が求める、優れているが高価ではなく、居心地が良いがかさばらない、モダンな生活や生産・流通の需要に応える」というテーマの設計競技である。このコンペに挑んだ坂倉準三の家具・竹籠低座椅子のバリエーション:「SEATING UNIT BAMBOO CHAIR 4」。
MoMAに当時のプレゼンボードが残されていることが今回判明し、複写版ながら展示したとのこと(学芸員:大村さん)……中編に引続きご紹介する坂倉準三展もいよいいよ後編・最終編。
「大扉」を右手に真っ正面は、奥へと広がる「第二章、三章、四章:都市に住む/個人住宅の多様な展開/文化をつくる建築家の仕事」の展示空間だ。
まず、目の前に翼を広げたようなテーブルが鎮座している。
中央にテーブルと椅子。両脇には坂倉建築作品パネルの展示が続く。 |
このテーブルは、W:1800、D:900、H730。ちょうど坂倉準三が最大規模の木造住宅:Sh邸を手がけた1950年代にデザインされた木製テーブルである。
坂倉準三が手がけた最大規模の木造住宅:Sh邸。1955年ル・コルビュジエも建設途中の現場に足を運んだという。 |
Sh邸は、兵庫県西宮市の清閑な住宅地に有り、1500?を超える南北に長い敷地の中央に奥行3間、幅10間の東西方向に細長い本屋がおかれ、その南側には広い芝生の庭になっている。(中略) この住宅は、坂倉にとって自信作だったと思われる。というのも、1955年11月5日の午後、来日中のル・コルビュジエを関西に案内した際、飛行機で到着した大阪の伊丹空港から京都へと向かう途中に、わざわざ建設途中だったこの住宅に2人は立ち寄っているからである。
(引用:「建築家坂倉準三」展覧会図録,80p)
この住宅には、会場で展示されているテーブルと同デザインのローテーブル(座卓)も使われており、坂倉が部屋や空間に合わせサイズ変更可能なシステムデザイン家具をすでに開発していることがわかる。
テラスに置かれたダイングファニチャ(食堂家具)、その奥には座卓(ダイニングテーブルと同ディテール)を囲んだ日本的な空間がある。 |
さて、展示しているテーブルをじっくり観るとする。
腰をかがめ、目線をテーブルの高さに合わせる。
テーブルの天板すぐ下に漏斗(ジョウゴ)の先端が伸びたような脚、面白い。
テーブルの天板と目線を合わせてみると、横の貫で連結した漏斗(ジョウゴ)の先端が伸びたような脚がある。 (写真をクリックすると脚部分が拡大されます。) |
脚と天版を漏斗(円錐)形の積層材(木材を何層にも重ね木の固まりをつくる)で接合する……坂倉準三は、この構造をシャンピニオン形式(フランス語でキノコ)と呼んでいる……たしかにキノコのようだ。 シャンピニオン形式は、神楽坂にある東京日仏会館(建築)の柱にも用いられている。(構造上)建築で可能ならば、家具でも可能!……坂倉にとって建築も家具も同じ目線でとらえてい……数々の名作家具を残している師匠のル・コルビュジエの影響もあるだろうが、(坂倉準三は)自分で創造する空間にあるべき家具・備品まで全てデザインする、言わば「総合デザイン」に徹したデザイナーなのである。(近年では建築家、インテリアデザイアー、プロダクトデザイナー、照明デザイナー、ファブリックデザイナー、スタイリスト等分業化され、建築家はそれらを統括するケースが多い。)
次のページで当時坂倉準三が手がけた住宅で使用されたオリジナルデザイン椅子をご紹介します。