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『坂倉準三』展 椅子から都市デザイン(後(2ページ目)

【石川尚のWAKUWAKUプレス・レポート】#53 建築家:坂倉準三。前編・中編に引き続き坂倉準三が精力的に挑んだ日本オリジナルの家具デザインと造形美をご紹介します。  取材協力:汐留ミュージアム

石川 尚

執筆者:石川 尚

ファニチャーガイド

「低座椅子」、「中座椅子」、そして「肘掛け椅子」


シャンピニオン形式テーブルコーナーの奥に3脚の椅子が登場。

周囲には当時設計した住宅の図面や模型が展示されているが、やはり、椅子が現れるとキラキラと眼が輝いてくる。


最も奥にある家具コーナーも気になるが、ますは手前の3脚の椅子。「低座椅子」、「中座椅子」、そして「肘掛け椅子」。
写真をクリックすると三脚の名作椅子が拡大されます。

ここにある3脚の椅子は、いずれも当時坂倉準三が手がけた住宅……元外務大臣・藤山愛一郎氏の自邸(1957年/東京)、歌舞伎役者・藤間(松本幸四郎)邸等で使用されている。 竹籠を使用した座椅子が原点となっている「低座椅子(座高:290mm)、低座椅子と通常の小椅子(座高:430mm)との中間に位置する「中座椅子(座高:345mm)」、そして「肘掛け椅子」(イージチェア、安楽椅子と呼ばれる)……それぞれ座高が異なる椅子をデザインしている。

畳の上で生活する日本的な空間と近代的な洋風な空間(生まれ育った日本空間とル・コルビュジエのもとで学んだ西洋空間)とを融合した新住宅では各々暮らしのシーン、とくに「座」の高さが異なってくる。例えば、畳の上での生活、食卓で食事をする、居間でくつろぐ場合、(床に、椅子に、座ると)おのずと人の目線の高さが異なってくる。その暮らしスタイルに対応した象徴が、「座高の異なる椅子」(もちろん、テーブルや収納家具なども同様)である。

暮らしの近代化を予知した坂倉準三のきめ細かいセンスがここにある。そして、西洋から入ってきた椅子に対して「日本の椅子」の原点がここにあると言っても過言ではない。

これらの椅子は、数多くの坂倉準三の家具を手がけた天童木工で製作され、現在も低座椅子を始め数点の椅子が商品として製造販売されている。(1964年に完成した天童木工・東京支店は坂倉準三の設計である。)

第12回ミラノ・トリエンナーレ 日本室展示を手がける。


さて、このセクションの一番奥にあるのが、第12回ミラノ・トリエンナーレ 日本室の再現展示である。


左手が「組立式飾棚」、右手ステージには「成型合板コマ入り肘掛け椅子」、そして日本独特の椅子「低座椅子」。壁面は、報道写真家:島田謹介による「雪の竹林」をパネル化している。
写真をクリックすると「当時の会場風景」が拡大されます。


1957年第11回に引続き、1960年第12回ミラノ・トリエンナーレ(トリエンナーレとは?)に二回めの参加となった日本。坂倉準三は、その要となり会場展示デザインをしている。
JETORO(日本貿易振興会)の予算で参加したトリエンナーレ、テーマは「家庭と学校」。高低差のある3つの展示ステージで「家庭」シーンを、平土間で「学校」のシーンを演出し、壁面には報道写真家:島田謹介による「雪の竹林」をパネル化した。
この展覧会の為に新しくデザインされた成形合板の家具を中心に、トランジスターラジオ、テレビ、カメラといった日本の代表的輸出商品が展示された。精密機械で、その後は自動車でと輸出大国になってゆく日本、しかしそのベースになる暮らし空間の場づくりに欠かせない家具から、それも欧米の模倣ではなく日本から発信する家具デザインに並々ならぬ尽力を注いだ坂倉の姿が浮かんでくる。

会場の事情もあろうが、出来るならば当時の輸出品や会場へ持ち込んだ品々を揃え、記念すべき(当時の)トリエンナーレ日本室展示全体を再現していただきたかった。

この展示コーナー左手は最後の展示セクション5 、「椅子から都市デザインまで」がある。

次のページで「椅子から都市」デザインまで行った坂倉準三の造形美に迫ります。



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