ドコモが主導したiDは後払い方式電子マネーの代表格
電子マネーには前払い方式と後払い方式があります。前払い方式にはスイカやナナコなど主要な電子マネーが含まれます。一方の後払い方式でもっともメジャーなのが、ドコモが主導するiDです。後払い方式は、特定のクレジットカード(DCMXや三井住友カードなど)と連携させて、毎日の利用金額を一カ月後にクレジットカードでまとめて支払う方式です。大きな利用額とスピーディーな処理が人気
クレジットカードの限度額をそのまま利用できるので、電子マネーより大きな金額を使うことができます。また、クレジットカードで必要とされるサインが一定額まで不要ですから、スピーディーに会計を済ますこともできます。現在、iDに対応する読取機は全国に50万台以上あり、広く行き渡っています。なかでも便利なのがタクシーや自動販売機です。とくにタクシーでは、長距離を移動しても金額を気にする必要がありません。サインも不要なので、急いでいる時には目的地に到着してすぐにクルマを離れることができます。その意味で、電子マネーやクレジットカードよりも適したツールといえます。日本の主要電子マネーで初めて海外利用が可能に!
そのiDが今度は海外でも使えるようになるというので注目を集めています。日本の電子マネー、SuicaやiDなどは、ほとんどフェリカという非接触ICを搭載しています。一方、海外では互換性のないタイプA/Bという規格が普及し主流になっています。ですから、iDを海外で使おうとしても全く使えないというのが現状でした(日本だけが孤立しているので、口の悪い人はガラパゴスという人もありました)。ところが、技術が発達したおかげで、スマートフォンにフェリカとタイプA/Bの二つの非接触ICを搭載することが可能となりました。そのため、状況が一変。iDで国内も海外も両方使えるようになったのです。
マスターカードのPaypassと提携、世界の加盟店を利用できる
その準備のために、ドコモはマスターカードと提携し、同カードが発行するタイプA/Bに対応したPaypass(後払い式電子マネー)の技術を譲り受けました。これで、iDは国内ではフェリカ対応の読取機を利用し、海外ではタイプA/B対応のPaypass加盟店(世界41カ国約50万加盟店)の読取機を使えるようになったのです。現在、対応するスマートフォンは、ドコモの2012年冬モデルのソニーモバイルSO-01EとシャープSH-02Eの二機種ですが、海外利用仕様にするのは簡単で、iD(DCMX利用に限る)がインストールされていれば、ボタンひとつ押すだけで、Paypass加盟店でも使えるようになります。これでiDを国内、海外の両方で使えるようになるわけです。
フェリカの顔を立てたドコモらしい解決策
それにしても、互換性のないフェリカとタイプA/Bを共に使えるというのは不思議です。しかし、これにはカラクリがあります。ボタンを押すことでiDとPaypassを連携させるのです。その結果、海外で利用した際には一旦はPaypassで処理されますが、後でiD利用分として合算されるのです。後払い方式ですから、見掛け上、iDとすることが可能なわけです。うまく考えたものです。いずれにしろ、これでiDを使って海外でも買い物ができるようになるわけで、日本のおサイフケータイもいよいよ海外へ進出する時が来たといえるでしょう。このサービスのスタートは2013年度上半期になります。