住みたい街 関西/キケンな街の見分け方[関西]

水害に弱い街は地名でわかる!? ~地名は水害の履歴書(2ページ目)

ここ数年のゲリラ豪雨、そして東北大震災の津波。住宅を選ぶ際に、水害のことを念頭において探す方が増えています。古地図で見る、役所で調べる、周辺でヒアリングする。そういったことを重ねれば、かつて水害があったかどうかについてはある程度わかります。一方、「地名を見ればわかる」という説もよく聞かれます。地名でわかれば楽だよな~。でも、本当に地名でわかるのかどうか?ちょっと調べてみました。

田中 和彦

執筆者:田中 和彦

住みやすい街選び(関西)ガイド

国土交通省のサイトで、過去に水害を経験した可能性があると例示されている文字が複数あります。「川内」「牛」と続いて、残りの文字をみてみましょう。

【灘】
ここはやはり神戸市の「灘区」「東灘区」でしょう。どちらも阪神間の人気住宅街。「河内」同様エリアが広すぎます...。

神戸市で広いエリアに大きな被害をもたらしたといえば、阪神大水害が有名です。昭和に入ってから3度起きています。灘区、東灘区にだけでなく六甲山山麓は、六甲山から流れ出る急勾配の小さな河川が多くあり度々水害が起きています。近年では平成20年に児童を含む5人が命を失った都賀川の増水事故が記憶に新しいところです。

現在は多くの河川で治水対策が進んでおり、大水害は近年起きていません。ただ局地的な水害は今でも時折起きており、過去どのような被害があった等は調査した方がよいでしょう。(このエリアの具体的な災害予想はこちらのPDFファイルをご覧下さい)

【沢】
元茨木川緑地

遊歩道となっている元茨木川緑地

町名や字名では多くあります。駅名では、神戸市長田区の神戸市営地下鉄西神・山手線「上沢」駅、大阪市住吉区の南海高野線「沢ノ町」駅、茨木市の大阪モノレール「沢良宜」駅。

「上沢」は【灘】で書いたエリアに近い場所。しかし、神戸市の防災MAP(PDFファイル)によれば浸水エリアからは少し離れています。

「沢ノ町」周辺は、過去の被害は調査していませんが、大阪市の防災マップをみたところ、大和川が150年に一度の雨で氾濫しても大きな被害はなさそうです。

「沢良宜」周辺には、その昔、茨木川が流れていました。茨木川は川幅が狭く川底が周囲よりも高い天井川で、流域の住民は度々水害に悩まされていた様です。現在は茨木川は河川付け替えにより消滅。かつて川のあった場所は元茨木川緑地が整備され、周辺住民の憩いの場として利用されています。

以下、地名駅名のみ列記しておきます。

【深】
京阪本線「深草」駅(京都府伏見区)
~線路に沿うように琵琶湖疎水が流れています。

大阪市営地下鉄中央線「深江橋」駅(大阪市東成区)
大阪市営地下鉄千日前線「新深江」駅(大阪市東成区)
~両駅の西側に平野側分水路が流れています。

阪神本線「深江」駅(神戸市東灘区)
~深江に限らず、広く芦屋川流域が阪神大水害で大きな被害を受けています。

【竜】
兵庫県須磨区竜が台
~戦後にできたニュータウンの一部で、「名谷町字龍華谷」の一字を取ってつけられた。近くに流れる福田川は、かつては度々水害に見舞われている。
大阪府八尾市龍華町
~龍華町に限らず周辺一帯は、かつては大和川の氾濫に悩まされた地域。その大和川は1704年に現在の場所に付け替えられました。

川内、牛、灘、沢、深、竜。これらの文字が含まれている地名が、過去に水害に悩まされてきた歴史をもつのは確かなようです。ただ歴史をさかのぼれば、「過去に水害に悩まされた地域」は多数有ります。また、それらの場所の多くは、河川の改修工事等によって、現在では水害の発生が少なくなっている場合が多く見受けられます。

以上から、特定の文字が含まれているということはあくまで「ヒントの一つ」であり、ある文字が含まれるから危険、含まれていないから安全等という判断は早計だといえましょう。水害に弱いエリアか強いエリアかの判断は、ハザードマップや過去の水害履歴を確認する等の地道な作業が必要なようです。
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