秋の夜長にオススメな映画「わたしを離さないで」
■ストーリー:寄宿学校「ヘールシャム」で幼い頃から一緒に暮らすキャシー、ルース、トミーの3人。外界と隔絶したこの学校では、保護官と呼ばれる先生の元で子供たちは絵や詩の創作をしていた。
18歳になり、寄宿学校を出て農場のコテージで共同生活を始めた彼ら。やがてルースとトミーが恋を育むようになり、キャシーは孤立していく。その後、コテージを出て、離れ離れになった3人は、逃れられようのない運命に直面することに……。
■出演:
キャリー・マリガン キーラ・ナイトレイ アンドリュー・ガーフィールド
■オススメの理由:
原作はイギリス最高の文学賞・ブッカー賞受賞作家、カズオ・イシグロの同名小説で、小説の世界感を見事に映像化した作品です。
タイトルだけ聞くと、ただただ甘い恋愛映画みたいですが、全然そうではありません。原作者が「これはSF」と語ったように、年代は昔のようですが、ストーリーのカギになるものは未来のこと。3人の登場人物が直面する恋、心の葛藤。そして作品の大きなテーマとなる「生と死」。
私は「わたしを離さないで」を見た後、しばらくこの映画のことが頭を離れなくて、いてもたってもいられず原作本を読み返してしまいました。
監督は、ミュージッククリップ界では巨匠と呼ばれているマーク・ロマネック。
(Michel&Janet Jacksonの「Scream」、Madonnaの「Rain」Lenny Kravitzの「Are you gonna go my way」Red Hot Chili Peppers「Can't stop」Johny Cash 「Hurt」などなど、独特の世界感を表現してきた人です。)
彼の手掛けた本作品はブルーとグレイを基調にしたひんやりとした映像は、絵画のように美しくて、主人公達の背負う数奇な運命の悲しさを引き立てます。
主演の3人も若手の実力派。特にキャリー・マリガンのすべてを赦して包みこむような深い演技に感動しました。生と死、倫理的なテーマで内容的には重めですが、美しい映像とカズオ・イシグロの小説を読んだ時のように詩情豊かで心に余韻を残す映画です。この映画のイメージは間違いなく、季節でいうと秋から冬。秋の夜長に見るのにぴったりな映画だと思います。