映画監督 ケン・ローチ
~オススメの作品「ケス」~
■ケン・ローチ作品のおすすめ:ケス
■作品概要:
さびれた炭鉱町で暮らす少年ビリーは、兄からも学校でもいじめられる毎日。ある日ハヤブサのヒナを見つけ、ケスと名づける。
人には懐かないと言われるハヤブサと心を通わせるビリー。国語教師ファーシング先生は、ビリーにハヤブサについてクラスの前で話させる。いつもはやる気のないビリーも、ハヤブサの話になると目を輝かせて活き活きと語りだす。いじめにあっていたビリーを助けたファーシング先生は、ハヤブサを見せて欲しいと言う。ビリーになついているケスを見て、先生は感心する。
ある日、ビリーは兄に馬券を買うように頼まれるが、その馬券は当たらないと言われ、預かった金を使ってしまう。ところがその馬券が大穴。事態を知った兄は怒り、ケスを殺してしまう。
■主なキャスト:
デイヴィッド・ブラッドリー、コリン・ウェランド
■ケン・ローチ監督を好きな理由:
左翼を自称し、一貫して労働者階級や移民たちの視線でリアルに描く、イギリス映画界最大の巨匠。そのため、「社会派リアリズム」と形容されることが多い監督だけれど、ケン・ローチの価値はそんなところにあるのではない。
例えば「ケス」は、社会派的なメッセージを伝えようとしてはいない。たんたんと、少年ビリーの「傷つきやすさ」に寄り添う。細部の細部までフィルムに焼き付けようとする。その優しさに心をえぐられる。
徹底した「救いの無さ」への執着。知人は(他の作品についてだが)「映画を見てこんな気持ちにさせられたくない」と言っていた(彼の作品はどれもそういう感情を与える)。
大切なケスを殺されるところは仕方のない「悲劇」だとしても、凡百の監督なら、その後ビリーが人とのつながりを取り戻してゆく、とかなんとか、そんな結末にしそうなものだが、この映画はビリーがゴミ箱からケスをひろって穴を掘って埋めるシーンで突然終わる。そこに救いは一切ない。ただ傷つけられて、捨てられて、おしまい。
■「ケス」の好きなシーンやオススメの理由:
ビリーの学校の教師は、校長を始め体罰主義のひどい教師ばかりだが(当然ビリーが体罰の標的にされるのだが)、体育教師がサッカーの授業でどの生徒よりもはりきり、自己実況中継をするシーンはこの映画の中で唯一笑えるシーン。
オアシスのノエルが「人生最高の映画」と評している。