以前、田口先生に取材をさせて頂いたのに続き、2回目になります。
なんと北宅先生の論文が今年のヒューマンリプロダクションにアクセプトされ、掲載されました。これは凄い事です。不妊治療の世界で最も権威のある雑誌への論文掲載はその内容を認められたという、快挙なのです。
そこで、その内容について取材をさせて頂いた訳です。
それではインタビュー内容をどうぞ!
子宮内膜再生技術(Intrauterine Fiberscope & Curettage of the Endometrium,IFCE)というのをオーク住吉産婦人科で行っていると伺ったのですが、それはどんなものなのでしょうか?
IFCEとは子宮鏡、子宮内腔細菌培養、内膜生検を組み合わせて子宮内の異常の有無を調べ、患者さん個々の状態を総合的に判断し、胚移植を行う技術です。北宅先生です。
まず、子宮の内側を専用の綿棒でこすり細菌培養に提出します。続いて、子宮鏡で内腔の形態の異常、筋腫やポリープの有無などについて観察し、キュレットという専用の器具を用いてごく一部の子宮内膜を傷つけて採取(内膜生検)します。内膜を採取した部分を意識して、次周期に胚を移植する技術です。
開発の経緯について教えてください。
良い胚を繰り返して移植できているにも関わらず、不成功を繰り返していた患者さんが、ようやく妊娠成立したときのカルテを調べてみると、うまくいった胚移植の数週間前に子宮鏡と内膜生検をセットで受けていたという共通点が見つかりました。そこからIFCEへの取り組みを始め、研究を進め、実際に成果を確認することができました。海外からも子宮内膜を専用の器具でごく一部傷つける(子宮内膜生検)ことが、次の周期の体外受精・胚移植後の妊娠成績を上げるという報告が増えてきていますが、われわれの検討では、IFCEの次の周期に胚移植した場合、何もせずに胚移植に進んだ周期に比べて、臨床妊娠率、継続妊娠率ともに約3倍高いことが分かりました(Hayashi T, et al. Clinical and Experimental Obstetrics & Gynecology, in press)。
オーク住吉産婦人科の外観です。
ポリープの有無や胚移植の方法などにも踏み込み、さらに成績をアップさせる方法を当院独自の観点から模索しているところです。
着床に望ましい場所というのはあるのでしょうか?
成功した胚着床の約9割は、子宮底部で起こると報告されています。この部分の微小血流や分子発現状態が胚を受け入れるのに最適な環境であると考えられています。当院では、各患者様の子宮形態を把握し、この部位を意識し、狙って生検およびその後の胚移植を行なっています。