その住宅プロジェクトは、FLAMINGO(フラミンゴ)と呼ばれています。わずか16坪という狭小地に一見相似形ともとれる形の2軒の家が隣接して建っている。それが2対のフラミンゴにも見えるということから来ているのでしょう。 このプロジェクトには、一風変わったエピソードがあります。それは、FLAMINGOの始まり、つまり発端にあります。
住宅プロデューサーの山本卓男さんは、施主であるMさんから「新宿から10分、土地建物込みで3000万の一戸建て」という依頼を受けました。しかし、建築費のことを考えると、土地はせいぜい7~8坪になってしまいます。山本さんは既存の不動産情報に頼らず直接地主と交渉するという方法をとり、ついに高円寺から徒歩5分の地に16坪の土地を見つけました。ですが、それでもまだ広すぎる。そこで彼はもう一人、Mさんと同じ女性で一人暮らしをしたいと考えているTさんを探し出してきたのです。そして、土地は登記上2つに分割され、プロジェクトがスタートしたというわけです。山本さんは言います。
「予算が3000万だからってあきらめちゃいけない。土地探しも建築もアイディア次第で何とかなるものです。情報はみんなの気づかないところにある。土地さえなんとかなれば、あとは建築家の才能が形にしてくれます」
つまり、FLAMINGOはこうした住宅プロデューサーなるものが介在した数少ない住宅建築の実例なのですね。そして、山本さんの言うこところの“才能”をあますところなく発揮したのが建築家・前田紀貞さんというわけです。